《特別寄稿》ブラジルに根付いた小野田精神(下) 地球の反対側の日本語学校という〝宝〟 サンパウロ市 榎原良一
「いざ、小野田牧場へ」
武井先生との楽しい会話は、約3時間に及んだ。ミリアンさんがJICAの日本研修で習得した和菓子も、会話に花を添えてくれた。当初は、武井先生とお会いした後に、午後からタクシーを雇い、小野田さんが所有していた牧場に向かう予定にしていた。 しかし、嬉しいことに、武井先生とミリアンさんが、道案内を買って出てくれた。小野田少尉が所有していた牧場は、当時国際協力事業団(JAMIC)から分譲を受けた土地から始まり、以降隣接地を買い増して最終的に約1200ヘクタールまで拡張していったらしい。 今は第3者の手に渡っており、牧場内には許可なしでは立ち入り禁止となっている。仕方なく、牧場を背景に3人の写真を撮った後、バルゼア・アレグレ日本人会館を訪ねた。会館では、武井先生が前もって連絡をしてくれていた江崎日本人会現会長ご夫妻が出迎えてくれた。 ご夫婦は私と同時期にブラジルに移住され、現在奥様はこの移住地で日本語の先生をされている。ここでも、5人の昔話や苦労話に話が弾んだ。いきなりやって来た私にも、「来る者、拒まず」の精神で私を歓迎してくれた。 この移住地は日本人社会ではバルゼア・アレグレ植民地と呼ばれているが、どうもブラジル人には聞き慣れない名前で一般的にはJAMIC植民地と言われているらしい。戦後、日本側で日本海外移住振興(株)が設立され、ブラジル側に現地法人として移住地の造成や営農指導を行うジャミック移植民(有)が設立された。 そして、このジャミック社の分譲地がこの周辺に有ったとのこと。日本人会の正式登録名はバルゼア・アレグレ日伯体育文化協会という。小野田さんはこの協会の初代会長、以来2期会長を務められた。
「日本精神が引き継がれるカンポ・グランデ」
武井先生が祖父母から受け継いだ日本精神は、60年以上経った今もカンポ・グランデで次世代の若者や子供達に受け継がれようとしている。日本語は世界一美しい言語であると同時に、世界一難しい言語でもあります。日本語を教えることは日本の文化を教えること、そして日本の精神を教えることでもあります。 ですから、日本語は簡単に習得できる言語ではなさそうです。何故ならば、日本の文化や精神は簡単に身につく程安っぽいものではないからです。しかし、若い頃に一旦身につけると、簡単に忘れてしまうものでもなさそうです。 そういう意味からも、武井先生は生き字引といえそうです。是非、武井先生にはお元気でこれからも、日本語を通じてブラジルに、そして世界にも通用する逞しいブラジル人を育てられることを切に願います。 「ひまわり学園教育方針」:人間としての基本的な心構えを日本語を通して身につけ、美しい日本の心「和と敬」を大切にして、ひまわりのように天に向かって恥じることなくまっすぐ伸びていきましょう。