頭痛薬、飲み過ぎでさらに悪化 頭痛持ち歴20年の記者も… 専門医に聞いた対処法
頭痛薬も飲み過ぎれば毒となる―。そんなことわざみたいな病気をご存じでしょうか。正式名称は「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」。連日薬を服用したり、痛みを感じる前に予防的に飲んだりすることで症状が悪化する状態を指すそうです。頭痛持ち歴20年の記者もMOHになりかけていました。 患者による頭痛ダイアリーの記入例など 小学生の頃から頭痛に悩まされてきた。雨が降り出す前や強い日光を浴びたとき…。ドクンドクンと痛みがだんだん強くなり、立っていられない。市販の頭痛薬を飲むと、スッと痛みが消えた。それからは、お守りのように必ず薬を持ち歩いてきた。 あれから約20年―。5月ごろ、いつものように薬を飲んでも痛みが治らず、1日に数回飲むことが増えてきた。不安になって受診すると医師から告げられたのは驚きの一言。「薬剤の使用過多による頭痛になりかけてますね」 初めて聞いたMOHという病名。国際的な診断基準によると、頭痛が月に15回以上あり、頭痛薬を3カ月以上定期的に使用しているとMOHの可能性があるという。日本頭痛学会認定専門医で土井内科神経内科クリニックの土井光院長(49)は「月10日以上飲んでいる人には受診を勧めたい」と話す。 ただ、いきなりMOHになるわけではないそう。前段階に慢性的な頭痛があるとして、「主に片頭痛か緊張型頭痛、もしくはその両方がある人が薬を飲み続けることで発症する」と土井院長は説明する。 片頭痛はズキズキと脈打つような痛みが特徴だ。緊張型頭痛はぎゅっと締め付けられるような感覚。慢性的な頭痛の中で最も患者数が多く、日本人の5人に1人が発症するとされている。頭痛の根本的な原因を解決する前に市販の薬を飲み続けることで、痛みの感受性が高まり、さらに薬を飲む悪循環に陥ってしまうそうだ。 MOHの治療の第一歩は、薬の飲み過ぎが頭痛の原因と知ること。症状を理解した上で「頭痛だけの日は我慢して、吐き気がする日は飲む」など徐々に量を減らしていく。土井院長は「2週間ほど薬を断つことで、痛みの感受性が下がっていく」と話す。 服用した薬の種類や回数、痛みの程度を記録する「頭痛ダイアリー」の活用もお勧めだ。実際に頭痛が何日あったか、天気や体調など症状が出やすいタイミングを「見える化」することで治療に役立て、投薬効果も分かりやすくなるという。 土井院長は「月に3、4回の服用で、薬を1度飲めば確実に痛みが治まる人はMOHの可能性は低い」とする。しかし頭痛の頻度が増えたり、痛みが悪化したりしたときは、安易に市販薬を服用し続けるのでなく、受診を促す。頭痛にはくも膜下出血や脳腫瘍など命に関わる病気が隠れている場合もある。 市販薬には、ロキソプロフェンやイブプロフェンの痛み止め成分だけが含まれる「単剤」と、それらに加えて無水カフェインなどが含まれる「複合鎮痛剤」がある。無水カフェインには痛み止め成分の効果を高める一方、依存性があるため注意が必要だ。 慢性的な頭痛がひどい場合は「薬が手放せない」「頭痛が起きたらどうしよう」と不安に感じる人も多い。片頭痛や緊張型頭痛の予防薬を使うこともMOHの治療の一つとなっている。
中国新聞社