<“静かに”主張するドラマ>「海のはじまり」「虎に翼」「Shrink」……批判精神が胸を打つ
「被爆体験者」とは、国が線引きをした被爆地の外に住んでいた人で「被爆者」と同様の「被爆健康手帳」をもらうことができない。「体験者」にも医療の補助などはなされていたが「被爆者」との差があった。長崎地裁は、原告44人のうち、15人を「被爆者」と認めた。この判決に、長崎市や長崎県など被告側は控訴している。
尊属殺人の重罰規定
最終週のヤマ場は、寅子(伊藤)の明律大学時代の同級生で弁護士となった、山田よね(土居志央梨)と轟太一(戸塚純貴)の共同事務所が弁護する「尊属殺人事件」である。 尊属殺人に対する刑罰は殺人罪の重罰規定だった。尊属とは祖父母や父母をいう。無期または死刑の刑罰が科されていた。 最高裁判所は、1973年4月4日の判決によって、尊属殺人の刑罰を規定した刑法200条は、法の下の平等を規定している憲法第14条に反するなどとして尊属殺人の規定自体は合憲ながら、執行猶予を付けられない重罰規定は違憲とした。 ドラマは、この判決の事件を描いている。その後、最高裁判決によって尊属殺人事件の規定の適用はなくなり、すでに刑に服していた人には恩赦がなされた。しかしながら、刑法から実質的に死文化していたこの条項が削除されるのは、1995年の刑法改正を待たなければならなかった。
精神疾患への理解を
声高ではないが静かに主張するドラマとして、「Shrink(シュリンク)―精神科医ヨワイー」(NHK総合、全3話)もあげたい。パニック障害、双極性障害、パーソナリティ障害の3回にわたって、精神疾患に対する理解を促している。 主人公の小さなクリニックの精神科医に中村倫也、看護師に土屋太鳳を配している。再放送をご覧になることをお勧めしたい。また、続編の期待もある。 土屋太鳳の俳優としての成長ぶりも好ましい。Netflixの世界的なヒットドラマシリーズ「今際の際のアリス」でヒロインを演じたアクションのために、鍛えた体幹とたたずまいが美しい。近くseason3が配信される。
田部康喜