「霧の淵」著名人からコメント到着 井浦新「監督の眼差しは逞しく、そして優しい」
三宅朱莉と水川あさみが共演した映画「霧の淵」の公開に先駆け、本作をひと足先に鑑賞した俳優の井浦新や別所哲也、映画監督の中野量太ら著名人のコメントが到着した。 【動画】三宅朱莉と水川あさみが共演した映画「霧の淵」予告編はこちら 本作の舞台は、奈良県南東部の山々に囲まれたある静かな集落。12歳のイヒカは、集落で代々旅館を営む家に生まれた。数年前から父とは別居しているが、母の咲は結婚を機に嫁いだ旅館を義理の父・シゲと切り盛りしている。そんなある日、シゲが姿を消し、イヒカの家族に変化が訪れる。三宅がイヒカ、水川が咲を演じたほか、三浦誠己、堀田眞三が出演。監督の村瀬大智は本作で長編商業映画デビューを果たした。 井浦は「田舎に住みながら丁寧に日々を暮らし 釣りを愛し自然の中に身を置く村瀬大智監督の眼差しは 逞しく、そして優しい」と評し、別所は「山深い霧立ち込める奈良の自然と共生し、『生きる』ことの意味、『家族』の意味、『永遠』の意味に優しく向き合えるモノガタリに、出会えた」とコメント。 中野は「人は、人生という限られた時間の中でどこで生きるのか? 誰と生きるのか?を決めなければいけない時が来る」「未来を想像させてくれるラストカットが素敵だ」とつづっている。このほか映画ジャーナリストの金原由佳、映画評論家の松崎健夫と真魚八重子、女優・絵本作家・画家の松本妃代によるコメントも下に掲載した。 「霧の淵」は4月6日より東京・ユーロスペースで先行上映。その後、4月19日より東京・TOHOシネマズ シャンテほか全国で順次公開される。 ■ 井浦新(俳優)コメント 霧は地を這いながら空へと舞い上がる その蒸気は雲になり雨を降らせ地面に染み込み また蒸発して霧になり地を這いながら空へと.. 過疎が進む山間の集落でも 祖父から孫へと受け継がれ身についていく知恵 存在は心の中にそっと居続けるだろう 切り倒された倒木から切り株から更新される新たな生命 人も自然も大いなる循環の中に在ることを教えてくれる 人口が減りいつの日か集落から人がいなくなったとしても それでも水は循環し山の生命は巡り続け この映画が集落の文化や風習そして人々を ずっと伝え続け誰かの記憶に残ってゆく 大人へと少し近づいた坂道を登っていく少女と 山肌を覆うように立ち込めて空に舞い上がる霧の 瑞々しい躍動感が私には重なって見えた 田舎に住みながら丁寧に日々を暮らし 釣りを愛し自然の中に身を置く村瀬大智監督の眼差しは 逞しく、そして優しい ■ 金原由佳(映画ジャーナリスト)コメント 明確に見えていたはずの風景がぼやけてくる季節がある。 目指す方向が家族間で違ってくることも。 変わることの切なさと痛みを描き、それでも進む道を探る。 「霧の淵」は、一陽来復の物語 ■ 中野量太(映画監督)コメント 人は、人生という限られた時間の中で どこで生きるのか? 誰と生きるのか? を決めなければいけない時が来る。 まだ若いイヒカは、悩んで考えて、きっと…… 未来を想像させてくれるラストカットが素敵だ。 ■ 別所哲也(俳優)コメント ヒトには居場所が必要だ。 自分らしくいられる場所。 たとえその場所が時間から置き去りにされ、忘れ去られようとしていても。。。 変わりゆくことに戸惑い、変わらないであってほしい永遠の「霧の淵」で、切なさを背負い生きる人々。奈良の大地は、そこに永遠に存在するのに、ヒトの営みは、自分勝手で、永遠でもなんでもない現実。山深い霧立ち込める奈良の自然と共生し、「生きる」ことの意味、「家族」の意味、「永遠」の意味に優しく向き合えるモノガタリに、出会えた。 ■ 松崎健夫(映画評論家)コメント 森が構成する樹々の狭間、或いは、家屋の柱や窓枠が構成するフレーム内フレーム。そういった構図(フレーム)の中心に、12歳のイヒカが佇んでいる。未来ある彼女の姿に対して、何かに囚われているかのような静かな焦燥を感じるのは、緻密な画面設計によるものなのだろう。山間のコミュニティに漂う空気は、穏やかなようで素っ気なく、優しいようで峻烈。美しさと過酷さとが同居するのは、まるで<霧>のごとしなのである。 ■ 松本妃代(女優・絵本作家・画家)コメント 川辺に座って、 水面の煌めきを眺めているようだった。 清々しく、時に飲み込まれてしまいそうなほど力強い自然。 その大きな生き物の呼吸の中で、人々が生きている。 いのちの流れと共に移りゆく日々の営みは、 強く、美しく、そして儚い。 ■ 真魚八重子(映画評論家)コメント 自然は恐ろしい。意思を持つように刻々と形を変えて視界を遮る霧。無言で窓ガラスを常に震わす風。人間は畏怖の念を抱き、背を丸めて都会に向かうのかもしれない。その自然と共存する主人公一家は、自分も自然の一部として、半ば恐ろしいものと一体化しているのではないか。 (c)2023“霧の淵”Nara International Film Festiva