「イスラエルが国際人道法違反の疑い」 米政権が報告書
バイデン米政権は10日、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘で、イスラエル軍が米国から供与された武器を国際人道法に違反する形で使用した疑いがあるとの報告書を議会に提出した。一方で、違反を認定するには十分な情報がないとして断定は避けた。武器供与の継続も可能となる。 【写真まとめ】イスラエルによる空爆で破壊された建物 バイデン大統領は2月、イスラエルへの国内外の批判の高まりを受け、米国から武器の提供を受ける国に対し、国際法を順守して使用していることを示す「確約」の提出を義務付けた。違反が認定されれば、武器供与の一時停止を含む措置が検討されることになっていた。これを受け、イスラエルは3月に書面を提出し、米国が調査していた。 報告書は、イスラエルが米国製の武器を国際人道法の義務に違反する形で使用したと評価するのが「妥当だ」と指摘。「イスラエル軍が市民の被害を減らす知識や経験などを持っているにもかかわらず、多くの市民の犠牲が出ている」とイスラエルの対応に疑問を呈した。 その上で、イスラエル側から「完全な情報」の提供がなかったと説明。さらにイスラム組織ハマスが市民を「人間の盾」に利用しているとして「紛争の性質上、個別の事案について決定的な結論を下すのは困難だ」とした。 米国はイスラエルにとって最大の軍事支援国で2018年以降、年38億ドル(約5900億円)相当の兵器や防衛システムなどを提供してきた。ただ、イスラエルが強行の構えを見せているガザ地区最南部ラファへの本格侵攻には反対し、既に爆弾などの供与を一時的に停止している。 バイデン政権にとって対イランなどの観点から、戦略的に重要なイスラエルの弱体化は避けたいのが本音だ。11月には大統領選も控えており、政治的に影響力が大きいユダヤ系の声も無視できない。同時に、ガザ地区の人道状況の悪化で若者を中心に政権への批判も高まっており、難しい対応を迫られている。 昨年10月のイスラエルとハマスの戦闘開始以来、ガザ地区での死者数は3万4000人を超えた。イスラエルはこれまで、民間人の被害を最小限にしつつ、国際法と人道支援の原則にも従っていると主張している。【ワシントン松井聡、エルサレム松岡大地】