1540万円を不正に取得…江戸川区の薬剤師会元トップが「コロナ検査キットを水増し販売」していた!
◆〈東京都江戸川区内の薬剤師で構成される「公益社団法人 江戸川区薬剤師会」。その会長が、コロナ検査キットの仕入れ価格を水増し、江戸川区役所に販売していたことがFRIDAYデジタルの取材で発覚した。さらに同薬剤師会は会長の権威を恐れ、取引の隠ぺいに走り、未だこの事実を公表していない。複数の元理事が、その実態を告発する〉 【独占入手】1500万円以上も水増しして…実際に交わされた「不正契約書」実物写真 会員薬局数177薬局、会員薬剤師数255人を数える「東京都江戸川区薬剤師会」で前代未聞の事件が起きた。 江戸川区薬剤師会のドン・S会長は、自ら経営する薬局と、同会が運営する臨海薬局を舞台に、江戸川区役所に対してコロナワクチンの水増し販売を行っていたというのだ。会長の不正を追及してきた元理事の1人であるA氏が語る。 「問題の取引が行われたのは、’22年1月から3月にかけてです。この期間に、S氏の経営する薬局からコロナ検査キットが臨海薬局に卸され、そこから江戸川区に対して不当な価格で売却されていたことが分かったのです。納入された検査キットは、『チェックМR-COV19』というロート製薬の製品。私も調剤薬局を経営していますので、問屋からの購入原価はわかります。当時は税込みで1375円でした。しかし、S氏の薬局から臨海薬局を通じて区に販売された価格は税込み3300円。実に1925円も水増しした金額で区に売却していたのです。これが8000個ですから、不正の金額は1540万円にもなっていました」 別の元理事のB氏も続ける。 「区から支払われた水増し分の1540万円のうち、1100万円がS会長の薬局に支払われていました。そして差額の440万円は臨海薬局の口座に残っていた。名目は『今回の取引の臨海薬局の手数料』という旨でした。臨海薬局は会営であり、会長であるS氏が自分の薬局で仕入れた原価に金額を上乗せして臨海薬局扱いで区に売却するやり方に、誰も異を唱えられなかったのだと思います」 本件は一昨年、江戸川区の健康部長が交代した際に明るみになったという。元々、今回の取引をS会長に依頼した前任の健康部長は、同氏と長きにわたり懇意の仲だった。しかし、新任の健康部長が不正なカネの動きに気付き実態を追及したところ、薬剤師会は水増しを認め、S会長はその水増し分を返金。さらに責任を取って翌年の’23年3月に会長職を退任した。 これにより、騒動は解決したかに思われる。しかし、そうではない。A氏が嘆息する。 「一見、解決したように見えますが、そうではありません。S会長は1100万円全額を臨海薬局の口座に返金。臨海薬局の口座に残る440万円と併せた1540万円を、薬剤師会は区に返却しなければならなかった。しかし、昨年12月に薬剤師会が返金した金額は1496万円でした。薬剤師会は、仕入原価1100万円には手数料4%がかかったと称して、その金額の44万円を引いた金額を返金していたのです。 言うまでもなくこの取引はS会長による不正で、本来なら存在してはならなかったものです。しかし、薬剤師会は会長退任後も手数料と称して44万円をとっていた。反省しているとはとても思えません。いまだにこの取引も公表していません」 元理事らは薬剤師会に、この問題を取り上げることを働きかけてきた。しかし、その主張が認められることはなかった。 「昨年5月の薬剤師会の定時総会では、『業務上横領事件としてS元会長を刑事告発しないのか』という意見も会員から出ていました。しかし、『今後の対応はより慎重に検討すべき案件。回答は差し控えさせていただく』と副会長はその場しのぎの対応に終始しました。このままほとぼりが冷めるのを待つという安易な考えがスケスケです。薬剤師会再生のためには、この事実を社会の多くの人に知ってもらうしかないと思いました。S元会長だけではなく、薬剤師会としての責任が明確になってこそ、新しい薬剤師会に生まれ変われると思っています」 FRIDAYデジタルは江戸川区薬剤師会に、S元会長の水増し請求取引の実態について質問状を送った。薬剤師会がこのような不正な取引を承認した経緯については、以下のように回答した。 「当時の実勢価格として 3,000 円(税込 3,300 円)が穏当であるという認識を前提として当該取引が承認されました。(中略)前会長の薬局において元値 1,250 円(税込 1,375円)で仕入れられたものであることが後に問題とされ、公益法人として適正な対応であったかどうかを改めて理事会で審議の上、これを不適正として区に返金することにしたものです。前会長によるこのような取引が利益相反取引として許されないものであることから、前会長の当会との関りの一切を排しております」 事態を公表すべきだというも声があることや、手数料分の未返金については以下のように答えた。 「現時点では、民事訴訟提起・刑事訴追のための手続きを進める予定はありません。もちろん、総会・その他において、会員から意向が示されれば、これを具体的に検討することになります。 本件は、随意契約に基づく公的調達手続きの問題なので、手数料が0やマイナス になるのはむしろ不適切であり、4%乗せられた金額をもって妥当と整理しました」 今回の取引は、公益社団法人である江戸川区薬剤師会の会長が、一時期とはいえ江戸川区役所から税金を業務上横領した形の取引だ。同薬剤師会の、真摯な反省と対応が求められている。 取材・文:長谷淳夫
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