「密室」が新しいメディアに 成長続けるデジタルサイネージの一角、エレベーター広告とはどんなビジネスなのか
オーナー側のさまざまなメリット
同社ではスポンサーからの広告料を原資に、設備の保守点検や番組制作者へのコンテンツ料に充てるビジネスモデルをとっている。基本的に広告料をビルオーナーが受け取ることはない。ビル側にとってメリットが大きいのは「オーナー枠」だと大塚氏は話す。 「例えば、オーナー枠でビルのイベント情報を流せば集客効果を期待できます。誰も使っていなかったラウンジを紹介することで、施設の利用率を上げられたという効果もありました。その他、空きオフィスや駐輪場の情報を流すのも有効です」 入居する企業の人たちが帰宅する夕方の時間帯に合わせて、1階の飲食店情報をオーナー枠で流すビルもあるという。テナント賃料が店舗の売り上げに比例する場合、こうした施策は効果を発揮するだろう。 「ある食品メーカーは、オーナー枠で社訓を流しています。昔のように紙で掲示せず、メールやイントラネットで社員向けの情報を流す企業も増えていますが、見ていない社員も多いのではないでしょうか。一方、エレベーター内で流せば見る確率は高まるでしょうし、ペーパーレスとオフラインのいいとこどりが可能です」 なお、設置費は東京社が負担するため無料。オーナー枠を活用すれば、ビル側は負担なくテナントの宣伝や社内情報の共有ができる。
「視聴率」を高める工夫
エレベーター広告事業を営む企業はいくつもあるが、同社によるとプロジェクターを使うのは東京社のみ。技術的にはどのような仕組みなのか。 「東京エレビGOとエレシネマは4G回線を使って映像を流しています。設置に際して、ビル内にセンターなどを置く必要はありません。エレシネマはセンサーの感知によって、扉が閉まっている時だけ映像を流す仕組みになっています。スクリーンとなる扉の上部は白色にする必要こそありますが、ほとんどの時間は映像を流しているので、意匠性への影響も少ないです。最近は透明のフィルムを開発し、白色にしなくても映せるようになりました」(大塚氏) 広告が効果を発揮するには、常に注目される必要がある。視聴率を上げるため、ソフト面でも工夫を凝らしていると大塚氏は話す。 「ずっと同じものを流していると、乗客は映像を見なくなり、広告の効果は低下します。視聴率を上げるため、コンテンツ枠では毎日内容を変えています。ニュースでは朝・昼・夜と常に新しいコンテンツを流しており、ざっくり5時間ごとに内容が変化します」