米国発のサブスクに日本人がせっせと課金…インバウンド需要でも追いつかない「異常円安」が発する「日本経済への警告」
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国民がせっせとドルで払う
さらに近年は、『デジタル赤字』も問題になっている。スマートフォンやパソコンで使用するITサービスはほとんどを外資系企業に占有され、彼らの存在なしには日常生活が成り立たないまでになっている。 「グーグルやアマゾン、アップル、マイクロソフトなどが提供するITサービスが、企業だけでなく、一般の人にも広がって、日本から定期的に米国の巨大IT企業に支払うおカネが増え続けています。また、金融の分野では外資系保険会社の存在も大きい。これらの外資系企業に支払う金額を総合すると、月々に6000億円近くになり、インバウンドによる月間の黒字額約4000億円よりも多いのです。大勢の日本国民が毎月せっせと一定額をドルに換えて支払っているわけですから、これが円安に影響しているわけです。こうした円安圧力は今後も続いていくし、その金額は大きくなっていくでしょう。つまり、恒常的に日本円は力を失っているのです」(第一生命経済研究所エコノミストの嶌峰義清氏) 円安を食い止めるために、日銀が利上げをすればよいという指摘もあるが、残念ながら話はそう単純ではない。金融・経済ウォッチャーで、青山学院大学大学院非常勤講師の鈴木明彦氏が言う。 「日銀が利上げをして、長期国債の利回りが暴騰すれば、景気の腰折れ懸念が高まるのはもちろん、利払い費が急拡大してしまいます。その結果、日本国債の信用力も下がることになりかねないからです。その際には円も株価も暴落することは目に見えています。そんなことを政治が望むはずがありません。つまり、円安抑制のために日銀が積極的に利上げをすることはないわけです」 では、いったい日本はどうしたらいいのか。鈴木氏が続ける。 「アベノミクス以降の円安で、海外売上高比率の高い大企業を中心に、見かけの利益が大幅に水増しされるというぬるま湯のような状態が続いて、外国企業と競争力の面で一段と水をあけられたことが隠されてきました。こうした状況を打開するためには、企業の努力で真の競争力を取り戻さなければなりません。 すべての問題は、日本企業の成長力が高まらないことです。本来、デフレ脱却とは、成長力が高まり、結果として所得が増えることでした。しかし、いつの頃からか、物価が上がることがデフレ脱却であるかのように捉えられるようになった。円安誘導も、物価を上げることが大きな狙いでした。しかし、成長力がない中で、どんなに物価が上がっても、国は豊かにはなりません。目指すのは、国民の所得が上がること。そのために経済が成長する必要があります」