復活のアコード、縮小セダン市場でキラリ 40~60代は振り向くか
本田技研工業(以下、ホンダ)は2024年3月8日、4ドアセダン「アコード」を販売開始した。これで同社のラインアップにセダンが復活したとともに、新たなホンダのフラッグシップモデルが誕生したことになる。新型アコードに試乗すると、セダン不況の今、ホンダはなぜ消滅したセダンをあえて復活させたのか、その理由がおぼろげながら浮かび上がってきた。 【関連画像】落ち着いた雰囲気のインテリア。液晶表示のアナログ時計も備わるなど質感の演出にも拘った 2023年12月初旬に予約受注を開始した新型アコードは、24年3月末の時点で既に1300台を超える注文が入っているという。先代モデル同様、タイの工場で生産され、日本に輸入されるグレードは1タイプのみ。世界で販売されるアコードの中ではフル装備に近いグレードだ。 価格は、昨今の資源高などの影響もあり、先代よりも約80万円高となる544万9400円。国内では最も高価なホンダ車となった点、そして年間販売計画が2400台という点を踏まえると、顧客の反応は良好で好調な滑り出しを見せている。 ●実は一時国内から消えていたアコード もともとアコードは1976年に、「シビック」の一つ上のグレードとなる上級車として誕生した。以来、世界で展開されるホンダの看板車種の一つとなり、日本では89年登場の4代目のモデル途中に設定されたステーションワゴンが特に人気となった。 変化が訪れたのは、2008年登場の8代目だ。ステーションワゴンの市場が縮小したことを受けて、ステーションワゴンの設定を終了。13年6月に発売された9代目以降でより上級なセダンへと方向性をシフトし、パワートレインもハイブリッドのみとなった。 エコでオーソドックスな高級車として一定の支持を得る中、20年2月発売の10代目アコードでは海外の工場から輸入することを決定。グレードは1タイプのみ。ただセダン市場縮小の波を受けて、月販計画台数は300台に抑えられ、ついに23年1月に国内販売を終了した。 というわけで、実は日本のアコードの歴史にいったん幕が落とされたのである。その後、ホンダのセダンそのものが国内から消滅するという噂もあったが、ホンダは23年9月に11代目となる新型モデルの発売を予告。国内セダン市場への生き残り策として、同社が示したのが今回試乗した新型の11代目アコードというわけだ。 機能説明の前に、試乗でどんな走りの印象だったのかをまず紹介したい。11代目アコード最大のポイントは、スポーティーなスタイルを裏切らない走りの良さにある。従来モデルより力強い加速を実現しただけでなく、加減速が多く生じる峠道でも、滑らかで俊敏な走りが味わえるように制御が作り込まれている。 パワーユニットは先代同様、ハイブリッドのみ。2.0Lの4気筒直噴エンジンに2つの電気モーターを組み合わせた「e:HEV」を搭載する。同システムは、ほとんどのシーンは電気モーターによって走行し、その際エンジンは発電に使われる。ただ高速走行時などエンジンの方が効率に優れる場合にエンジン駆動を行う。いわゆるパラレル式のハイブリッドとなっている。 メインとなる走行用モーターは、最高出力135kW(184ps)で最大トルク335Nm(34.2kgm)なので、かなり力強い。それでいて燃費は、23.8km/L(WLTC)に抑えられており、従来型よりもプラス1km/L向上させており、経済性も良好だ。 評価したいのは、回生ブレーキの強弱をより細かく調整できるようになり、運転する楽しさを追求していることだ。それでいて、高い室内の静粛性と乗り心地の良さを両立しているおかげで、同乗者がいても不快な思いをさせることがない。また運転支援機能が向上しており、特に高速道路でドライバーの負担が軽減されている。今の生活者が上級セダンに求める様々な要求に、細かな気配りでしっかり応えていると感じた。 エクステリアは、セダンで流行している4ドアクーペタイプで、ボディー剛性や室内の静粛性を考慮し、独立したトランクルームを備える正統派セダンのパッケージングを採用。全長4975mmという大きさを生かして、後席もある程度ゆとりを確保している。これは、国や地域によっては、アコードは送迎車として活用されている点を踏まえている。もちろん、日常での使い勝手は考慮され、全幅は従来型と同じ1860mmとした。 インテリアは最新ホンダ車に共通する印象で、落ち着いた雰囲気を大切にしたデザインとなっている。素材や細部への作り込みは上質さを意識しており、高級感も感じられる。