「THE SECOND」ガクテンソクが2代目王者になるまで 〝引退〟考えるも…今大会で輝いたわけ
初代王者と通じるガクテンソク
見事第2代目王者となったのがガクテンソクだ。初戦でラフ次元との「大阪ダービー」を制し、続く準決勝で金属バットを退け、決勝戦でザ・パンチに勝利。結成19年目で見せた圧巻の漫才だった。 ひょうひょうとボケ倒すよじょうと、小気味よいツッコミと新鮮なリアクションが光る奥田修二。テンポのよい掛け合いの中で、確実に笑いを増幅させていくのが実に巧みだった。 どのネタもウケていたが、とくに印象に残ったのが1本目だ。昨年、大阪から東京郊外の国分寺に転居したよじょうを、東京進出ではなく「転勤」だと指摘する奥田。その後、よじょうが「別の物件を見に行ったがどれもよくなかった」と苦い顔をする。 事故物件と前置きしながら、その内実を「前に住んでた女の人が足つったらしい」と明かせば、奥田が「事故かそれ? 怪我やけどな」と返し、続けてよじょうが「床にね、サイコロ置くでしょ。ほんなら転がって行ったんや」と口にすれば、奥田が「サイコロが!?」と驚きつつ手でサイコロが転がるマイムを見せ「じゃあ足つるよ。しがみついて生きてんねやから」と補足し、見る者の頭に“どんな部屋か”の絵を描かせる。 次によじょうが「国分寺に大豪邸を建てたい」と理想のイメージを語り始め、リビングに敷く絨毯の候補を挙げて「トラ皮、ヒョウ皮、鳥皮」と指を折れば、奥田が「最後なんかヌルっとした1枚敷いてましたけど、イケます?」。さらにそんなリビングで「ワインを飲みながら、ビール飲みたい」とボケると「よくないですよ、体に! さっき、よかったら鳥皮あったんで」と前のボケを差し込み笑わせたりもする。 こうした練られたやり取りの連鎖が、みるみる観客を魅了していった。大会終了後の優勝記者会見でよじょうが「去年早めに負けたんで、正直ネタのストックあった」と語っている通り、「物件ネタ」「サプライズネタ」「歌ネタ」と3回戦い抜くだけの準備があった。この点は、昨年ネタの幅広さを見せて優勝したギャロップと通じるものがある。 結成間もなく2005年の「M-1グランプリ」で準決勝進出。しかし、そこからラストイヤーまで一度も決勝まで勝ち上がることができなかった。第1期のM-1が終了した時期には解散の話も出たようだが、「(筆者注:漫才で)何者かになって辞めよう」と踏みとどまった。 そんな2人が今大会で優勝を果たし、改めて引退を撤回したのが感慨深い。今後、ますます円熟味を増した漫才を見せてくれることだろう。