「チーム間の差が広がるけど、それでもいいのかい?」ノリスが抱える2026年レギュレーション変更の懸念
F1が2026年から導入される新テクニカルレギュレーションの概要を発表し、未来のF1がどのような姿になるのかと大いに注目を集めている。しかしこれについてマクラーレンのランド・ノリスは、レギュレーション変更によりしばらくの間は、今のような接近戦を見るのは難しくなるだろうと語った。 【ギャラリー】F1史上最も醜い、2014年のF1マシン全車 2026年からはF1のテクニカルレギュレーションが大きく変更される予定だ。そのカギとなる部分はパワーユニット(PU)で、従来のMGU-Hが廃止され、扱う電気エネルギーの量が急増。その上エンジンで使う燃料は、持続可能燃料のみとされる。これに伴い、シャシーのレギュレーションも変更されることとなり、その概要がF1カナダGPの木曜日に発表された。 この新レギュレーションは、マシンのパフォーマンスという点でどうなるのか不明な部分が多く、大きな注目を集めている。そんな中でノリスは、別の影響もあるはずだと懸念を語った。 ノリスが心配しているのが、レギュレーションが変更されることにより、チーム間の差が大きくなる可能性だ。今年のカナダGP予選では、ポールポジションのジョージ・ラッセル(メルセデス)と2番手のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が全くの同タイム。そればかりか、上位7台が0.280秒差にひしめく、大混戦だった。しかし、レギュレーション変更によってこうした激戦がしばらくの間見られなくなるとノリスは考えているのだ。 「今日のような日は、もう二度とないだろうね」 ノリスは予選後にそう語った。 「26年はもちろん、27年や28年……おそらく29年までは、こういうような日はもうないだろうね。それは、いつもそうだったんだ」 「レギュレーションが変わる度に、大きな差が生まれる。今のレギュレーションになる前の年、2021年には接戦だった。レッドブルとメルセデスが対決し、そして誰もが接近していた。その後、(レギュレーション変更により)全てが再びバラバラになったんだ」 「レッドブルの時代もあった。でも今では僕らは追いつくことができたようだ。だから、僕らはそこに近付いているし、おそらく来年は、最初から最後まで、誰にとってもエキサイティングな年になるはずだ。しかし、2026年になればそれも終わるだろう」 ノリスは、F1はシリーズをどうしていくのか、考えなければいけないと語った。つまりはレギュレーションを安定させることで接戦を生むか、あるいはレギュレーションを定期的に変更し、差が広がることを許容するか……ということだ。 「2026年のレギュレーションでは、レースに何らかのメリットを生むかもしれないし、悪くなることもあるかもしれない」 そうノリスは語った。 「レースのタイプは、おそらく今とは違うものになるだろう。だから複雑なんだ」 「簡単な答えではない。同時に、答えはわからないとも言える。それがどう展開していくのか、誰にもわからないんだ」 「レギュレーションが変更される直前には、今回のようなことがある。より接近した戦いが見られるんだ。そして今では、メルセデスもここにいる。つまり、優勝を目指して戦っているチームは4つだ。勝利を争えるマシンが8台いて、毎戦のように異なる勝者を目にすることになるだろう。それは、観戦する人たちにとってエキサイティングなことだと思う」 「でも間違いなく2026年には、そうなることはない。だから今のような興奮を維持したいのか、それとも全てを変えて、差を広げたいのか、考え方の違いによって異なるんだ」 2026年のテクニカルレギュレーションは、6月28日に開催される世界モータースポーツ評議会で承認される見込みだ。しかしチームやドライバーたちの懸念に応じて内容を修正する余地があると、FIAのシングルシーター担当ディレクターのニコラス・トンバジスは語っていた。
Jonathan Noble