【SUMMER SONIC 2024】クリスティーナ・アギレラが17年ぶり来日、圧巻のステージは共に過ごした年月と自分を強くさせるメッセージを噛みしめる時間に
セルフタイトルのデビュー・アルバム発売から25年という記念すべき年に、世界屈指のディーバ=クリスティーナ・アギレラが実に17年ぶりの来日を果たした。8月17日と18日に開催された【SUMMER SONIC 2024 TOKYO】の2日目、<MARINE STAGE>に登場した彼女の歌声に誰もが圧倒されたステージの様子をお伝えする。 その他の画像 R&Bやヒップホップ要素強めの2002年発表アルバム『ストリップト』でポップアイドル路線からのイメージ脱却に成功した彼女は、2006年のヒット作『バック・トゥ・ベーシックス』でその名の通り、音楽の原点であるジャズやソウルに挑戦し、その後もエレクトロ・ポップや全編スペイン語など、トレンドやルーツに合わせてさまざまなアーティスト像を見せてきた。外国人オーディエンス率高めのスタジアムはうだるような暑さに晒されたが、デビューから変わらないその太い歌声、“口から音源”に会場は熱狂。これまでの年月を思い返す体験もくれた。 親の仕事の関係で幼少期に日本に住んでいたことがあるクリスティーナは、久々の来日を日本仕様のオープニングでスタート。桜や桃のような木に腰掛けるピンクの髪をしたアバターがステージ壇上に立つ本人に変わり、かっこよすぎるアギレラに世界が恋したスマッシュヒット「ダーティー」で一気にスタジアムを沸かせる。提灯が連なっているようなヘアアレンジが素敵だ。自身の名をXtinaと表記するように、「キャント・ホールド・アス・ダウン」「バイオニック」では両手を胸の前でクロスするダンスの所々に散りばめられていた。 自分最高主義ソング「ヴァニティー」はセクシーさとナルシシズムを持ち合わせつつ、近未来感のある映像は奇遇にも次のヘッドライナー、ブリング・ミー・ザ・ホライズンの世界観にもどこか通ずるものがあった。 ここからは前述のアニバーサリーを一緒に祝うステージに。「ジニー・イン・ザ・ボトル」はラテン調のスロウテンポにアレンジされて別曲に生まれ変わったが、コーラスパートは全員で大合唱。「節目に故郷に戻ってこられて、こうやってみんなの目を見ながら25周年を祝うことができて、本当に嬉しい! これからも一緒に祝っていこうね」と同じく25歳を迎えた「ホワット・ア・ガール・ウォンツ」で瞬時にタイムスリップ。シャウトが効いた「ユア・ボディ」、「人生一度きり、今を楽しまなきゃ!」と“ミスター・ワールドワイド”ことピットブルのヒット曲「フィール・ディス・モーメント」で人生最高の瞬間を作っていく。 2006年の大ヒット曲「エイント・ノー・アザー・マン」で今度は白黒時代にタイムスリップ。冒頭のホーン、称賛せずにはいられない代表的なシャウトが観客の興奮を呼び覚ます。一時期は音楽から離れて子育てに専念していたとはいえ、衰え知らずのボーカルとダンススキルに脱帽するのと同時に、プロとして今もトレーニングを欠かさず行っていると見てとれた。 「すごく暑いけど、いい気分。音楽で繋がれるのって美しいよね。生きていると答えを求めたり、時には祈り続けたりすることもあるけど、音楽が問いに対する答えを与えることもあって、私の答えはここにある。悩みは尽きないかもしれないけど、大丈夫なんだよ! 人生まだまだわからないことだらけだけど、自分を信じて。そこに答えがあるから。」 そう言って、自身が参加してヒットに導いたア・グレイト・ビッグ・ワールドの「セイ・サムシング」をコーラスのネルソンと一緒に歌い上げた。その美しさに息をのんだのも束の間、主演映画『バーレスク』より「ショウ・ミー・ハウ・ユー・バーレスク」のダンサーパフォーマンスと「エクスプレス」に続いた全米No.1ソング「レディ・マーマレード」には思わず声を上げてしまった。マラボーや大きな羽根扇子、シミーダンスを用いて、ステージは一気に華やかなキャバレーに様変わり。演者たちは性別関係なく自己開花と快楽をエンターテインメントへと変化させていく。 2004年の【第46回グラミー賞】で<最優秀楽曲賞>にノミネートされた名曲「ビューティフル」は、ランウェイを歩きながら一人ひとりに訴えかけるクリスティーナの歌声と楽曲が持つ「そのままで十分完璧」という心強いメッセージにあらためて感動。当時はあまりわからなかったこの曲の意味が、今ならすごくわかるし、SNSと共存していくこの世界に必要なナンバーだ。 ロックに、攻撃的に届けた「ファイター」は、自分を強くしてくれた批判・裏切りへの感謝と「感謝してるけど、この恨みは忘れないからね」という皮肉っぷりが実に清々しい。最後は「お互い愛と理解を持って生きよう」と言わんばかりに、虹やユニコーン、スーパーヒーローのXtinaが飛び出して、少数派も置いていかない万人向きのステージに。自分の道は自分で切り拓いていく、意志を強く持つ女性を体現してきた彼女は、常に自分に正直だったと思う。人々の声を聞き、代弁するのも表に立つ者の役割であるが、彼女がしてきたことは確かに誰かの支えや憧れになり、その影響は自身の娘や次世代に受け継がれているだろう。 Text by Mariko Ikitake (C) SUMMER SONIC All Copyrights Reserved. ◎公演情報 【SUMMER SONIC 2024】 2024年8月17日(土)、18日(日) 千葉・ZOZOマリンスタジアム、幕張メッセ 大阪・万博記念公園