本当に必要なときに言えてる?「ごめんなさい」を言うべき時とその方法
逆に「ごめんなさい」が言えない理由
じゃあ、「ごめんなさい」が喉につかえて言えないときがあるのはなぜ? 「大きな過ちに対して謝罪するのが難しく感じるのは、それが自分に欠点があることの反映だからです」とシューマン博士。「そして『ごめんなさい』と言ってしまうと、その欠点(能力不足、判断ミス、不誠実さなど)を自分で認めることになります」 「自分の欠点は自分の自信に関わってくるので、なかなか認められません。欠点が見つかりすぎると、長い間、自分に自信が持てなくなります」とシューマン博士は続ける。それがうつ病につながって、自分を嫌いになったり尊重しなくなったりする。それどころか、自分の判断を信じられなくなって、過去の過ちにとらわれてしまうこともある。「重大なミスをしたにもかかわらず、謝ることに抵抗を感じるのはそのためです」 イギリス版ウィメンズヘルスのファッションアシスタント、アビゲイル・ブキャナン(22歳)は自称“連続謝罪犯”。でも、本当に謝ったほうがようさそうなときだけは謝れない。「私は、いつも不必要に謝ります。お客さんに夕飯を出すときは不味かったときのために謝り、誰かが『今日は嫌なことがあった』と言ったときは同情心から謝ります。でも、自分が本当に間違いを犯したときは、謝ることに抵抗を感じます。彼氏や両親といった親しい人に対しては特に、自分の弱みを見せまいとする傾向があります」 アビゲイルが口をつぐむのは自己防衛のため。「セルフモニタリング能力が高い人(人の目をものすごく気にする人)は、何か間違ったことをしても謝らない可能性が高いです」。これは身近な人に自分がどう思われているかを気にするがゆえの行動。 ヘレナ(31歳)は白ワインを飲みすぎたあとに彼氏と別れた。「最悪でした」と彼女は当時を振り返る。「くだらない大喧嘩が始まって、私は酔いと怒りに任せて思ってもいないことを散々ぶちまけ、しまいには『もう一緒にいたくない』と言って家を出ました。彼は追いかけてきませんでした。あれだけ侮辱されたんだから当然です」。その翌日は朝から後悔でいっぱいだった。「謝らなければならないのは分かっているのに難しくて。2週間経ったいまでも彼に電話する勇気が出ません。惨めです」 これは自分の頑固さのせいでパートナーを失ったという極端なケース。でも、ヘレナが膠着(こうちゃく)状態を打破するためには? ヨヴァノビッチ教授によると、こういうときは謝ることに抵抗を感じる理由を考えてみるといい。「単純にアンフェアだからなのかもしれませんが、謝ることに抵抗を感じるのはおそらく何かが気に障っているサイン。あなた自身とあなたが置かれた状況に関する重要な情報を得るための手がかりです」 気が進まないかもしれないけれど、これは非常に大事なプロセス。「自分の過ちを認めて謝れば、その出来事を乗り越えて前に進み、その過ち自体の悪影響を和らげることができます」とシューマン博士。「逆に責任逃れをしようとすると、そのぶん状況が悪化して、心の中で自分のことを悪く言うようになります。そうなると、ただのミスが自分という人間に関わる問題になってしまい、それがメンタルヘルスに大きな影響を与える可能性が出てきます」 過去のツイートが掘り返されて、有名人や大手企業が公式謝罪会見を迫られる現代では、「ごめんなさい」という言葉が本来の意味を失うばかりか、不必要なストレスを引き起こすこともある。世間の注目を浴びている人に至っては、評判が悪くなることを恐れるあまり、何1つ悪いことをしていなくても「ご迷惑・ご心配をおかけして申し訳ありません」と謝罪の言葉を口にする。 SNSマネージャーのエミリー(25歳)は、インスタグラムとツイッターにそれぞれ1万5千人のフォロワーがいる新進気鋭のインフルエンサー。「騒ぎを引き起こすのは本当に簡単で、人は何が起きているのかも知らずに押し寄せてきます。例えば、おなかを空かせたクマの漫画を冗談のつもりで投稿したら、世界の一部の地域ではクマが絶滅しかかっているという事実を軽く考えていると言われたことがあったのですが、そのコメントに30件以上の“いいね”とリツイートが付いたんです。ショックでしたね。そのときは『もちろん、私はクマが直面している苦しい状況を軽視しているわけではありません』と言って軽く謝りましたが、いつの間にか『私の勘違いだったら申し訳ないのですが......』とか『意味のない話だったら申し訳ないのですが......』という一文で投稿を始めるようになりました」 彼女たちの経験から何か1つ学ぶとすれば、それは「ごめんなさい」は本当に必要なときのために取っておき、その言葉に何らかの意味を持たせること。でも、バカなことはできるだけ最初からしないようにして......。