西武ドラ1はなぜ負けない? “宝刀”は低め徹底…データで浮き彫りの高度な投球術
1イニングあたりの投球数「13.4」はパの先発投手で最少
ここからは、2ストライクに追い込んだ後の投球を分析していきたい。2ストライク時の球種割合と被打率を見ると、チェンジアップが被打率.077と優秀な決め球であることが分かる。0・1ストライク時には、チェンジアップの投球割合は10.9%と使用頻度が低く、相手打者にチェンジアップの軌道をなるべく見せることなく、2ストライクに追い込んでから勝負球として用いているようだ。 今季2ストライクから投じたチェンジアップ52球を分析すると、88.5%にあたる46球を低めのゾーンに集めていた。打者にとって打ち頃である、真ん中から高めに抜けることはほぼなく、被打率の低さも納得の内容となっている。低めの46球のうち41球がボールゾーンであり、勝負球のチェンジアップは徹底して打者が打ちにくいゾーンに集中している。相手打者は2ストライクに追い込まれると、低めボールゾーンのチェンジアップを打たされる形となり、ヒットを打つのが困難な状況となっているようだ。ストライクを取る制球力はもちろんのこと、決め球として投じる変化球の精度も非常に高い。 こうしたストライク先行、かつ優秀な決め球を操る武内の投球は、球数の少なさにつながっている。1イニングあたりの投球数は13.4球で、パ・リーグの先発投手の中で最も少ない。開幕からの7登板で1試合最多の投球数は103球と無理をさせない起用法の中で、平均投球回は7イニングを超過。省エネピッチングで多くのイニングを投げ抜くことに成功している。 リーグ最下位に沈む西武において、開幕から負けなしの4連勝とルーキーながら獅子奮迅の活躍を見せる武内。6月4日には、感染症による体調不良で登録抹消されたが、26日の日本ハム戦で復帰登板を果たした。確かなコンロトールと精度の高いチェンジアップを武器に、今後は連勝記録をどこまで伸ばすことができるか、そして新人王を含めたタイトル争いに注目したい。
「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部