帰還困難区域の野行地区 風力発電所周辺の避難指示解除へ 福島県葛尾村方針、来年春に
福島県葛尾村は、東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域の野行地区に整備が進む風力発電所周辺の避難指示解除を目指す方針を固めた。発電を開始する来年春に解除したい考え。住民が居住しない土地に限り安全を確保した上で避難指示解除を認める「土地活用スキーム(枠組み)」を適用する。28日、村役場で開いた住民説明会で示した。 避難指示解除を目指す区域は風力発電所の周辺や、発電所につながる管理道路などの計約17・5ヘクタール。現在、地区内の国有林が広がる場所に葛尾風力や福島復興風力が風車を整備している。発電事業が始まれば風車の維持管理が長期にわたり必要になるため、避難指示解除によって立ち入りの規制を緩和し、事業を円滑に進められるようにする。 住民説明会は冒頭を除き非公開で開かれた。葛尾風力と福島復興風力、内閣府の関係者が避難指示解除や発電開始に向けた計画を説明した。終了後、篠木弘村長は報道陣の取材に「住民から理解を得ることができた。復興に向けた大きな一歩になる」と強調した。風力発電所を見学できるよう付近を観光地化すべきとの意見も出たとし、「しっかりと検討をする」と述べた。
同様の枠組みを適用する事例は飯舘村に続き2例目となる。国は人の居住を想定していない土地の避難指示解除の要件を①年間積算線量が20ミリシーベルト以下に低下②土地活用を行う事業者らによって必要な環境整備が実施されていること③地元との十分な協議―と定めている。 葛尾風力や福島復興風力によると、避難指示解除を目指す区域の年間積算線量は、ほぼ全ての場所で20ミリシーベルト以下を下回っているという。両者は今後、表土を剥ぎ取るなどして線量を一層低減させる。 野行地区は村北東部に位置し、村内で唯一の帰還困難区域となっている。一部は特定復興再生拠点区域(復興拠点)となり、2022(令和4)年6月に避難指示が解除された。