聞きたいのは具体的なプラン…「丁寧な説明」ってどういうこと? 言語学者が気になる政治家の言葉遣い
「スピード感をもって」「緊張感をもって」も政治家言葉
岸田首相がよく使う「丁寧な説明」。でも、同じことを何度も繰り返していて、「丁寧な説明」って、こういうこと? と思うことがしばしば。明治大学大学院で日本語の史的研究を専攻している小野正弘教授によれば、 【5人の実名&爆睡写真】岸田文雄首相の答弁中に「ぐっすり寝ていた自民党大幹部」 「『丁寧な説明』とは、聞いている人にわかりやすく、細かく、説明を尽くすこと。同じことを繰り返して、長く説明することが『丁寧な説明』ではありません」 そうですよね。誰もがそう思うのに、どうして本来の「丁寧な説明」にならないのだろう。 「細かいこと、具体的なことを言うと、突っ込まれるからでしょう」 “突っ込まれないための言葉”を、政治家はたくさん持っているという。 「たとえば『スピード感をもって』は、よく使われる言葉です。聞いたほうは、『急いでやるんだな』と思うかもしれませんが、いつまでに何をやるとは言わない。何も約束されていないのです。 『緊張感をもって』も同じです。また、『○○したい』とも、よく言いますが、これも希望を述べているだけなので、実現しなくても嘘を言ったことにはなりません」 はっきり言わないのは、言質をとられて、できなかったとき責められるからではないかと、小野教授は言う。 「言葉はコミュニケーションの手段ですが、政治家の言葉はコミュニケーションになっていない、あるいはコミュニケーションを拒絶する“ディスコミュニケーション”の宝庫。言語学者として非常に興味深く聞いています」 曖昧な表現とは別に、ディスコミュニケーションとして小野教授が挙げるのは、“はぐらかし”。 「たとえば『○○へ行ったんですか?』とYES・NOで簡単に答えられる質問に『職務をまっとうしたい』などと、方向違いの答え方をするのは、その代表例です」 ◆代々受け継がれて…政治家の言葉は「ディスコミュニケーション」に 小野教授によると、言葉は30年くらいで使われ方が変わってくるという。 「たとえば『かわいい』という言葉。もともとは目下の人の愛らしさを現す言葉として使われていたもの。 ところが最近は目上の人に対しても、その仕草や態度が愛らしいと感じたときにも使われています。本来の意味を残しつつ、使い方が変わる。言葉はそういうものなのです」