善光寺の大勧進問題、退任表明の小松貫主が職務復帰
善光寺大勧進(天台宗)の小松玄澄貫主(げんちょう・かんす=84)に差別的な発言などがあったとされる問題で、かねて辞任要求を受けていた同貫主は1月10日に退任を表明、同時に当面の職務に戻り本堂に上る「昇堂」を22日再開しました。ただ、退任時期は明確ではなく、問題収束の見通しはやや不透明。地元の市民らは「事実関係が判明しないままの収拾の動きは分かりにくい」などと当惑気味です。
はっきりしない退任時期
小松貫主は雑誌で身辺が取り上げられた後、2005年に天台宗一山25院の一部などから退任を求められ、その後裁判に発展。2016年には大勧進の女性従業員に対する差別発言があったおそれがあるとして、大勧進関係者や信徒らが貫主の辞任を求めました。 差別発言問題では、人権団体が2016年に当事者らから事実関係を確認するための会合を開きましたが、小松貫主からの説明を十分得ることができず調査は中断しました。 この間、小松貫主は差別発言などの事実を否定しながら昇堂などの職務を自粛。2017年の春から給与の支払い停止の決定を受けていました。 事態が動いたのは1月10日。小松貫主が記者会見して「しかるべき時期の退任」を表明、県内メディアが一斉に報じました。同時に、大勧進側の会議で小松貫主の職務復帰が決まりました。ただ退任の時期は明確ではなく、問題解決の行方ははっきりしません。 22日早朝、小松貫主は1年以上自粛してきた昇堂のため大勧進から善光寺本堂に向かい、参道には貫主の数珠を頭に頂く「お数珠頂戴」のため多くの人が膝を屈して手を合わせていました。小松貫主は2月3日の節分会(せつぶんえ)のための福升への書き込みなど職務に戻っています。 地元の人たちは小松貫主の昇堂に関心を示したものの、「退任はいつなのか」「何かはっきりしないね」などとすっきりしない表情。「長い間善光寺の評判を損ない、県外の人にまで指摘されて恥ずかしい思いをした。大勧進に人が寄らなくなることも心配だった」と苦い表情で語る人もいました。 善光寺は天台宗の大勧進と浄土宗の大本願が共同で運営し、大勧進の貫主と大本願の上人が善光寺の住職を務めています。年間の参拝者は600万人に上ります。
---------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者・編集者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説