ポスト半導体は素材株か、業況改善で割安修正-日本株押し上げ役に
(ブルームバーグ): 日本株市場では素材株が相場の新たな押し上げ役となるかもしれない。これまで上昇をけん引してきた半導体関連銘柄の陰に隠れてきたが、事業環境の改善に伴い出遅れ修正が続くとの見方がある。
鉄鋼や非鉄金属、化学などの素材株は、デフレ脱却に伴う価格上昇や、低迷する中国経済回復の兆しから恩恵を受けるとみられている。足元の株価評価尺度(バリュエーション)は比較的割安で、東証33業種別の予想PER(株価収益率)は鉄鋼指数が8.3倍、非鉄金属指数が13倍と、東証株価指数(TOPIX)の16倍を下回る。
こうした要因が評価されれば、日経平均株価の史上最高値更新をけん引してきた半導体関連銘柄との差を縮めることができるかもしれない。MSCIジャパン指数の業種別指数を見ると、過去1年間に半導体・半導体製造装置が2倍以上に上昇した一方、素材の上昇率は30%と総合指数の40%を下回った。
世界的なインフレで投入コストが膨らみ、日本銀行の金融政策転換で借り入れコストの上昇にも直面する中、企業は製品価格を徐々に引き上げている。鉄鋼を中心に原材料価格の値上げも進んでおり、日本製鉄や王子ホールディングスなどの素材メーカーは恩恵を受けやすい。
SMBC信託銀行の山口真弘シニアマーケットアナリストは、インフレで素材メーカーはコストの価格への転嫁がしやすい局面になっていると話す。日本企業全体で収益が過去最高を記録する中、顧客は値上げを受け入れやすくなっているとみる。
景気動向に敏感な素材セクターの上昇は、TOPIXの史上最高値更新を後押しする可能性がある。
一大需要国の中国で経済指標が改善していることも追い風だ。1-2月の鉱工業生産の伸びは市場予想を上回った。政府が景気刺激を狙って1兆元(約21兆円)の超長期特別国債の発行を計画していることも素材株の支えになる。
楽天投信投資顧問第二運用部の平川康彦部長は、足元の経済指標を踏まえると、中国経済の悪化の影響がほかの先進国にまで波及する心配はないと言う。素材株の「割安なバリュエーションが修正される局面は続くだろう」とし、今後も堅調に推移しそうだと述べた。
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Yasutaka Tamura