TM NETWORK、全国ホールツアー『STAND 3 FINAL』オフィシャルレポートが到着
シーンは変わって、ステージに降り注ぐのは金色の夢? 七色の夢? グランドピアノを弾く木根によるリズミカルなビートが高揚し、TM NETWORK初期のライブ人気曲「You Can Dance」のシーケンスが解き放たれた。1994年以来となる、驚きの選曲にFANKS、歓喜の渦。いや、TM NETWORKに捨て曲など一切なく。実はどの曲も、時代を揺さぶるナンバーとなる可能性を持つことを証明していく。 イントロのフレーズがインスパイアされたこともあり、木根は敬愛するエルトン・ジョンのごとくハットをかぶり、カラフルなサングラスへと着替えた。気がつけば宇都宮もサングラス姿だ。小室はショルダーキーボード=Mind Controlへ持ち替え、まるでギターのように鍵盤を弾き倒す。ハイテンション、ロックンロールなダンスチューンに遊び心を織り交ぜていく。アウトロでは、まばゆい光に照らされながら、3人がピアノを囲むトライアングル・ポジションが尊い。 あやしげなSEに導かれ、「Past1984」が映像とともに流れはじめた。意味深な“1984001”そして“14930”という数秘。緊迫した空気感。浮かび上がる正方形に瞬く額縁のように謎めいたワームホール!?が印象的だ。 聞き覚えのあるピアノリフ。さらに、TM NETWORK最重要曲「ELECTRIC PROPHET」のシーケンスが聴こえてきた。22世紀から時空を超えて会いに来てくれたTM NETWORKというSFめいた物語は、本曲からはじまったのだ。光のタワーと思われた照明は、実はプログラミングで自在に稼働するUFOのようなLED付きミラーdot mirrorだった。地上からSharpyによるライトをビームの如く直に照らすことで反射する光を演出していく。アクロバティックな構造だ。その効果はまるで、映画『未知との遭遇』の宇宙船のシーンのようにも見えた。 打ち込みと生演奏と映像を融合する、TM NETWORKが発明したサウンドマジックはシアトリカルに繰り広げられていく。 名曲は続く。せつないメロディーが心を打つ知る人ぞ知る「Human System」。街を行き交う交差点や道路に重ね合わされながら、モンタージュ写真のようにフェイス映像をカットアップしていく。宇都宮の歌声と木根によるアコースティック・ギター、モーグによる小室のシンセサウンドが重なり合うあたたかく優しげな高揚感。 さらにレア曲として、今の時代にも通じるメッセージ性や世界観を感じさせる壮大な「Come Back to Asia」をドラマティックに聴かせてくれたことも驚きだった。作品が生み出された昭和時代とは大きく変化したアジアの存在感。アジアが持つ意味。そして、歌詞から伝わってくるレクイエムなメッセージ性。せつなさを噛み締めながら浸りたいナンバーだ。 ピアノによるTK-soloパートは、会場それぞれ小室によるインスピレーションによって演奏曲は入れ替わっていく。この日は、反戦歌をイメージした「All-Right All-Night (No Tears No Blood)」を、絶妙なピアノ構成によるアレンジでプレイ。さらに映画『ぼくらの七日間戦争』のサントラ『SEVEN DAYS WAR』から「WINNERS」の一節をつま弾き、記憶の扉を開けていく。 木根曲の「GIRL FRIEND」へとシナプスを紡ぎ、ヒット曲「SEVEN DAYS WAR」を奏でながら小室は一拍間を置き、0.5秒ぐらいの瞬間にオーディエンスへコーラスを促した。まるでニュータイプのように意思は通じ合い、一気に歌声が轟く会場。鳥肌もののモーメントだ。 感動はまだ止まらない。『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』のハイライトシーンで流れた挿入歌「Angie」を、即興アレンジを交えながらピアノメドレーのシメとしてしっとりと響かせてくれた。まるで数百年前からこの世に存在していたかのような魔法めいたメロディーの力。音楽家とは数秘を操る科学者であり魔術師だ。心がほろほろと溶けていく瞬間だった。 ラストスパートはTMのシングルで最もセールス枚数が多い90年代のヒット曲「Love Train」。赤い照明とグラフィカルな映像美、EDMライクなパーカッシブなアレンジがクールだ。途中、当時のミュージックビデオとシンクロさせる驚き。あれから33年。正方形の額縁のような枠=ワームホールらしきどこでもドアから映し出された懐かしさを超えていくフレッシュな感情に名前をつけて欲しい……、と思った。そして、途中inter Missionでは、世界中が抱える闇の問題。紛争のシーンが映し出され、浮かび上がったのが“We pray For the peaceful days Ahead”のメッセージ。 ここで通常ならおそらく「Get Wild」へ繋がるはずのTKエレクトロ・タイム。だがしかし、サンプリングされた異なるリフレインがビートに呼応する。まさかの「Nervous」でフロアを盛り上げていく驚きの展開へ。本作は、初期TM NETWORKのライブで人気だったダンサブルなポップチューンである。オーディエンス大熱狂。本能を掻き立てるエネルギッシュなパワーを持つナンバーだ。宇都宮による、当時を思わせるダンスも健在。モニターには、赤く光る正方形の石碑が輝き出し、ピラミッドのような四角錐状なモノリスへとチェンジしていく姿も意味深だった。TM NETWORKによるパワーが充電されたことのメタファーなのだろうか?