アウトバウンドセールスは「AIにおまかせ」の時代へ。進化するセールステックの最新動向
CRMを解析してターゲットを検出「OneShot」
AIをアウトバウンドセールスに活用する「セールステック」企業は他にもある。元Salesforceの幹部が2021年に立ち上げたOneShotもそのひとつである。同社はAIを使ってCRM(顧客関係管理)をマイニングし、「理想のペルソナ」を作成したり、見込み客がアクションを起こす「シグナル」を特定したりするシステムを開発している。 OpemShotのテクノロジーは、リンクトインのプロフィール、企業のウェブサイト、財務報告書、SNSまで広範囲に検索し、同社が導き出した「理想のペルソナ」に近似したターゲットを選出する。そして、効果的にアプローチできる可能性の高い顧客を特定する。 また、見込み客のメールやリンクトイン、SNSアカウントなど、複数のチャネルに利用できるカスタムメッセージも生成できる。その相手にとって何が最適かをアドバイスしてくれるため、従来のような「定型文を一斉送信」ではなく、個別化・最適化された内容でプッシュすることができる。 OneShotの共同創業者であるペダ・ポーラは、「多くの企業は、従来型のアウトバウンドセールスに多額の費用を投じていますが、今はより科学的でデータ主導型のアプローチの方が、良い結果を得られるでしょう」と述べている。 OneShotは、ベンチャーキャピタル42CAPや複数の投資家から資金調達をしており、その額はこの2年間で約290万ドルにのぼる。
大手企業も利用する「Apollo」
2015年にサンフランシスコで創業したApolloは、B2B営業のプラットフォーム開発を手がけるスタートアップだ。適切な見込み客の探索、メールの自動生成ツールや大規模なアプローチなど、AIを取り入れたスマートな営業アシストサービスを提供している。 現在、同社は2億7,500万件を超える顧客情報のデータベースを保有している。Lyft、ペロトン、Gympassなどの大手企業を含む約1万6,000社の企業が有料会員として利用しており、セールステック業界では頭ひとつ抜けた存在といえる。 ApolloのプラットフォームはCRMと直接統合でき、高度なアルゴリズムとデータ取得方法を使って、見込み客のビジネス属性と連絡先を提供する。CRMデータベースに加えた200以上の独自の属性によって、情報に変化があった場合はリアルタイムで通知される。 営業にテクノロジーを取り入れる動きは急速に拡大している。Gartnerによると、セールスリーダーの93.6%が、テクノロジーへの投資や利用を考えているという。 実際、その効果も出ているようだ。ホスティングサービスのKinstaは、Apolloを導入したことで営業チームの成長率は360%に達したと報じている。また、ApolloのオープンAPIを使用した営業代行会社のLeadiumは、年間収益が3倍に増益。セールステックは、今後のアウトバウンドセールスの鍵を握る存在となっていくのは確実だろう。
文:矢羽野晶子/ 編集:岡徳之(Livit)