【長崎】全国初 知的障害受刑者への支援モデル事業中間報告会 長崎刑務所
NCC長崎文化放送
知的障害のある受刑者の特性に合わせ、社会復帰を支援するモデル事業が長崎刑務所で進められています。その事業内容が公開され、関係者らによる中間検証報告が行われました。 【写真】全国初 知的障害受刑者への支援モデル事業中間報告会 長崎刑務所
全国の刑務所で唯一、「社会復帰支援部門」が設置されている諫早市の長崎刑務所。刑務所内の工場の中で、花火や紙袋を作っていたのは、知的障害がある受刑者です。 長崎刑務所では、2022年から九州各県の刑務所などから知的障害のある受刑者を受け入れ。個々の特性に合わせた作業や就労訓練を行っています。地元の社会福祉法人南高愛隣会などと連携し、立ち直りや社会復帰を支援する全国初の国のモデル事業です。 事業の背景にあるのは、再犯率の高さです。刑務所を出所後、再犯までの期間が2年未満だった知的障害者の割合は25.8%にのぼり、受刑者全体の13%の倍近くとなっています。現在、事業対象となっている受刑者33人でみると、罪名は窃盗が9割を占めていて、入所回数は平均5.5回、最高12回にものぼります。 支援モデル事業では、まず面接や細かい手作業で受刑者の得意・不得意を判断し、それぞれの強みを生かせるような支援計画を作って3つのコースに振り分けます。出所後も福祉サービスが必要とされた受刑者のコースでは、絵画や和太鼓の練習などを通じて、達成感を感じてもらうほか、協調性を養い、自己肯定感を高めます。また、人との接し方も指導します。 長崎刑務所・多田裕史総務部長: 「知的障害を持っている方の中にはこれが近いとか、相手にとってはちょっと嫌な距離だということを気付かない方もいらっしゃるので、それが目に訴えて分かるように、これくらいの距離がいいということを覚えてもらうための仕掛けです。私たち刑務官が持っていなかった、気付いていなかった働きかけですので、そういうことが出来ているということに喜びを感じています」 事業の中間報告会には、効果を検証する大学や法務省矯正局の関係者らが出席しました。法務省矯正研修所が実施した受刑者への調査では、事業を通じて、自己肯定感が高まったと評価しました。「誰かに相談できるようになった」「相手を尊重できるようになった」との声があったといいます。 来年6月には、「懲役刑」と「禁錮刑」がなくなり、「拘禁刑」が新たに導入されます。明治時代の制定以来初めて刑法が変わり、モデル事業のような受刑者の「立ち直り」を重視した指導や教育が刑務所で出来るようになります。 長崎刑務所・平川勝文首席矯正処遇官: 「『人に頼ることが再犯しないためには大事なんだ』と言う受刑者も増えてきている。そういう態度変容が一つ成果として実感を得ているところ。福祉の接し方がやはり大事なんだと効果があるという実感は我々としても肌で感じることが出来るようになってきたし、職員としても(来年6月から)拘禁刑が始まるので、支援者としての目線で対象者に接するところにだんだん意識が変わっていっていると思う」 これまで事業の対象となった受刑者はのべ65人。事業は2026年度まで行われ、法務省は、得られた知見をもとに、全国の刑務所に広めたいとしています。
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