「娘の汚名を晴らしたい」広島廿日市・女子高生殺害事件から約20年 今もブログを続ける父の願い
●事件直後、家族で黙々とパズル
暴行事件がなければ真相は闇のままだった可能性が高いこの事件。あまりにも身勝手な犯行、そしてその後も長い間自ら罪を打ち明けなかった加害者の行為は、被害者や遺族を苦しませ続けた。 事件直後は被疑者が捕まっていなかったため外出することもできず、しばらくの間、家族で自宅にこもってジグソーパズルを黙々と作り続けたという。 「2000ピースぐらいのものを10個以上作ったと思います。変に会話せずにすみますし、パズルに集中できるので」 忠さんは死刑を望んだが、広島地裁で開かれた裁判員裁判は2020年3月、鹿嶋受刑者に無期懲役の判決を下した。 「なんで娘がおらんなってお前が生きているのか。生きていること自体、許すことができない。本来は人の命を奪ったなら自分の命で償うのが一番です。家族を奪われた人間にとって死刑以外はありません。詐欺や傷害事件であれば、加害者に『悔い改めてやり直しなさい』と言えます。でも人を殺しておいてそういうことは絶対にありません。人の命を奪った人間に『立ち直り』という考えはありません」
●娘の汚名を晴らす、解決後もブログを続けるワケ
事件は解決したが、忠さんはその後も4年以上ブログを更新し続けている。その背景には、事件から約1カ月たった頃に直面した忘れられない出来事があった。 通勤中の電車内で忠さんの近くにいた男性2人が「ひと月経つけど、あの事件解決しないよね。刺されて殺されたみたいだから、相当悪い女の子なんやろうね」と会話しているのを耳にした。 当時は犯人が逃走中だったため、捜査機関の見立てや憶測を交えて「恨みによる犯行か?」などと報じられていた。忠さんはニュースを見ていなかったが、電車内の出来事を機に、娘への根拠のない噂や誤解が広がっているのではないかと心を痛めてきた。 今もブログで聡美さんのことを発信するのは、娘の汚名を完全に消し去りたいという願いがあるからだ。 鹿嶋受刑者に対して無期懲役の判決が下された翌日の2020年3月19日のブログで、忠さんは聡美さんについて以下のように書いて訴えた。 「皆さん『突然、命を奪われた優しい女性』だという事に必ず、考え方を変えて頂きますように強く願います。一日でも早く、悪い噂や考え方を頭の中から消して下さい」