卓球の聖地“東京体育館”で決まるパリ五輪代表
2024年になり、夏に開催されるパリ五輪の日本代表争いも本格化してくる。1月22日からは本番でもメダル獲得を期待される注目競技の一つ、卓球の全日本選手権が行われ、シングルス代表男女各2人が決定する。会場となるのは東京体育館。東京都渋谷区千駄ケ谷に所在し、JR総武線千駄ケ谷駅や都営大江戸線国立競技場駅を出るとすぐに美しいフォルムの建物が姿を現す。東京2020大会 の会場になり、最近では〝卓球の聖地〟と呼ばれつつある。しっかりした伝統ある場所で、日本中が注目する戦いが繰り広げられる。
東京2020大会の名場面も誕生
東京2020大会 の名場面の一つに挙げられるシーンも、この東京体育館が舞台だった。卓球で最初の種目だった混合ダブルス。現在は引退した水谷隼と伊藤美誠(スターツ)のペアが日本卓球界初の金メダルを獲得した。静岡県磐田市の互いの実家が近所という2人。赤を基調とした床の上で、同系統の色のウエアを着た年上の水谷と伊藤が抱き合って歓喜に浸った。東京体育館に仕立てられた華やかなステージ。新型コロナウイルス禍の影響で無観客実施の状況下で微笑ましい一幕となり、さわやかな風を吹き込んだ。 劇的な勝ち方が盛り上げを演出した。ドイツのペアと当たった準々決勝。11点先取の最終ゲームで2―9と大幅なリードを許した。さらに6―10と相手にマッチポイントを握られて絶体絶命のピンチ。ここから驚異的な粘りを発揮し、16―14と大逆転して勢いに乗った。強豪の中国ペアに挑んだ決勝でもゲームカウント0―2とされながら、積極的な攻撃で逆転し、今まで勝ったことがなかったという相手を撃破した。その後も女子団体で銀メダル、女子シングルスの伊藤と男子団体が銅メダルを獲得と、日本勢は躍進を遂げた。 卓球観戦の醍醐味は何といっても圧倒的なスピード感。ラケットのラバーで回転をつけながら、息をもつかせないような高速ラリーが展開される。カット打ちの選手だと台から離れた位置で相手の強打を返し、ダイナミックな応酬が繰り広げられる。ボールが軽くて小さい分、選手の能力を公平に出させるためには、会場設定に繊細さが求められる。東京体育館を運営する東京都スポーツ文化事業団は、配慮する点についてこう説明する。「試合中、空調の風が強いと競技の妨げになるため、空調を弱めに設定することがあります。競技特性の奥深さを感じます」。徹底した仕事ぶりで好勝負の舞台を整えている。