「登場人物になりきって旅して」スペイン人監督オススメの映画鑑賞法
「登場人物になりきって旅してください」と、映画の楽しみ方を勧めるのは、スペイン人映画監督のパブロ・ベルヘルさん。東京都千代田区のインスティトゥト・セルバンテス東京で10月28日、彼が監督したアニメ映画「ロボット・ドリームズ」(スペイン・フランス合作)が特別上映された際、会場にいた人々にそう呼びかけた。 特別上映は、10月25日から31日にかけて同インスティトゥトで開催された「ドキドキ・アニメーションÑ(エニェ)」の一環として行われた。 「ロボット・ドリームズ」は、1980年代のニューヨークに住んでいるという設定のドッグと、彼が通信販売で購入して組み立てたロボットを中心に展開する物語で、サラ・バロンによる同名のコミックが原作。このアニメ映画作品は、フランスの2023年アヌシー国際アニメーション映画祭のコントルシャン部門で最優秀作品賞を受賞した。コントルシャン部門は、19年に設けられ、個性的な長編作品で、観客に課題を生み出してくれる挑戦的な作品が対象となっている。
上映前に、ベルヘル監督は、「(会場が)暗くなったら、自分の人生を忘れ、登場人物のドッグやロボットになりきって、(映画の舞台である)1980年代のニューヨークに旅してください」と会場の人々に語りかけた。 このアニメ映画では、登場人物は様々な動物の姿で登場する。ニューヨークで孤独な生活に沈んでいたドッグは、自分で組み立てたロボットとともに、ニューヨークのあちこちに行き、友情を深めていく。だが、海水浴場に行ったことで、2人の運命に波乱が生じていく。
ベルヘル監督は上映後の会場のステージでのトークなどで、このアニメ映画制作の背景や狙いを語った。映画の舞台の設定は、ベルヘル監督自身が「80年代のニューヨーク」で暮らしていたからだという。原作を映画化するにあたって、内容を膨らませていく過程で、ベルヘル監督自身の体験が織り込まれていった部分もかなりあった。この映画を制作すること自体が、ベルヘル監督が「80年代のニューヨークに旅する」ことでもあったようだ。 「今回のアニメ作品の原作は米国だが、私のアニメ制作の根底には日本アニメを見た体験がある」とベルヘル監督は言う。 そして、「私はスタジオ・ジブリのアニメ映画の大フォン。宮崎駿監督の『天空の城ラピュタ』にはロボットが出てくる。もちろんそのロボットと、私が監督した映画のロボットはまったく性格が異なるものではあるが」とも言う。 「天空の城ラピュタ」に出てくるのはロボット兵で、「ロボット・ドリームズ」に出てくるのは、人間の友だちになり、一緒に普段の生活を楽しむロボットだ。