ライター・編集者 山脇麻生さんの「いま人に薦めたい愛読マンガ」6冊 小学生男子ふたりの友情未満の物語
人生で思わず夜ふかしして読んでしまったマンガは?
◆『光る風』山上たつひこ/フリースタイル 舞台は軍事国家と化した近未来の日本。高校生の六高寺弦が翻弄される姿を描いたディストピアSF長編。 「夜ふかしというニュアンスとはちょっと違うかもですが、2008年当時、映画館で『ダークナイト』を観てから友人と飲み食いしつつ感想戦を楽しみ、帰宅後、神経が高ぶっていたこともあって、「マンガ読んでから寝ようかなー」と、ふと積ん読の中から手に取った1冊が、この年復刻された『光る風』でした。世代が違うこともあって、それまで山上さんの作品は『がきデカ』しか読んだことがなかったのですが、この作品がエグるものの大きさ、深さが半端なく、脳が痺れまくって朝まで眠れなくなった日のことは今でも忘れられません」
山脇麻生さんの「マンガを読むときのマイルール」
「主にお風呂に浸かりながら読んでいます。至福のひとときです」
青田買いした注目の新人作家の作品は?
◆『mothers』草原うみ/トゥーヴァージンズ 喪失を抱えるふたりの母の心の葛藤を描いた「mothers」ほか、珠玉の12編を収録。 「心の奥底に澱を抱えたふたりの母親が、ある出会いをきっかけに心を解かしてゆく表題作をはじめ、遠い日に傷ついた人の心を優しく揺らした行為が、数年の時を経て温かな時間を連れてくる瞬間を描いた『ティラミスのパフェ』など、人間関係の複雑さをやわらかな視点で捉えた12篇がどれも良かったので。初連載の『やがて、ひとつの音になれ』も楽しく読んでいます」
食欲の秋に読みたいグルメマンガは?
◆『レタイトナイト』香山哲/トゥーヴァージンズ 生きるための旅をテーマに、力を持たざる者たちの冒険と、細かな暮らしのプロセスを描く異世界ファンタジー。 「本作はレタイトに住む少年が、生活に苦しむ人々や街に漂う閉塞感から、『何かがおかしい』と感じて、外の世界を見るために旅立つ物語です。グルメマンガではないのですが、旅先の食堂で『野菜もち』とか『麦ディスク』とか『みどり移し豆』とか、たくさんのマリム(定食)が出てくるんですよね。それが素朴だったり、ミールスっぽかったりするんです。香山さんの絵の魅力も相まって、全部めちゃくちゃおいしそうで」 ライター・編集者 山脇麻生(やまわき・まお)さん マンガ誌編集を経てフリーに。各紙誌でコミック評及びコミック関連記事などを執筆。京都精華大学新世代マンガコース非常勤講師も務める。現在、11月刊行の知識ゼロでも楽しめる黄表紙の本を執筆中。 発表! CREA夜ふかしマンガ大賞2024 眠りにつく前のひとときに、日中のあれこれを忘れさせ、新しい世界に連れ出してくれる力のあるマンガを称える「CREA夜ふかしマンガ大賞」。昨年からはじまった一般読者による投票を一次選考として、200作品以上が候補にあがるなか、2024年のナンバーワンが決定しました。
大嶋律子(Giraffe)