第二の人生「花咲かす」 小矢部の島さん、定年後に就農 後継者不在の栽培引き継ぐ
●松井園芸の農地取得 県高岡農林振興センターで担い手支援課長を務め、3月末で定年退職した小矢部市後谷の島嘉輝さん(60)は、市内の中山間地で農業を始めた。後継者不在で廃業の可能性があった「松井園芸」(同市松尾)の花栽培を引き継ぐため、第二の人生の舞台に農業を選んだ。島さんは「松尾で育った花を途絶えさせず、きれいに咲かせ続けたい」と意欲を見せている。 島さんは1988(昭和63)年に小杉農業改良普及所(現県高岡農林振興センター)に勤務し、以来36年間にわたり花き園芸の普及や研究に携わった。 島さんは2022年3月、仕事を通じて約20年交流のあった松井園芸の松井秀明さん(75)から1・2ヘクタールの農地を取得した。松井園芸が花を栽培していた借地で、地主がこの農地を松井さんに譲ろうとしたが、松井さんが高齢を理由に固辞したため、島さんが引き受けることにした。 松井園芸はキクやトルコキキョウの切り花の生産、啓翁桜やハナモモ、タラノメの促成栽培などを手掛けている。松井さんが48歳のころに脱サラして始め、生産基盤は安定しているものの、後継者がいないことを知った島さんが「このまま廃業となるのはもったいない」と考え、事業の承継を申し出た。 島さんは現在、花の栽培や出荷など年間の流れを松井さんから直接学んでいる。今春はお盆用のキクの定植を行い、直売所などへの出荷を予定している。 島さんは「松井さんが出荷していた花を待つ人のためにも頑張りたい」と力を込めた。松井さんは「名乗り出る人がいなければ、やめるつもりだった。何とか経営を安定させてほしい」と期待を寄せた。