指揮官が訴えかけた「浦和を背負う責任」。長崎U-18相手に3発快勝を収めた浦和ユースは“因縁の相手”とのGS最終戦に堂々と向かう
[7.23 クラブユース選手権(U-18)GL第2節 浦和ユース 3-0 長崎U-18 ヤンマーフィールド長居] 【写真】伊東純也ら日本代表トリオがパリ観光! サングラス&私服姿に「三つ子みたい」「まじで顔小さい」 彼らは追い込まれていた。負ければ限りなくグループステージ突破が厳しくなる一戦。指揮官は選手たちに訴えかける。自分たちは何を背負っているのかを。自分たちは何のために戦っているのかを。そして赤き血をたぎらせたイレブンは、甦る。 「今日の試合前に『君たちは浦和を背負う責任を持って戦わなくてはいけない』と。『それはトップチームもユースも育成も一緒だよ』という話をしたんですけど、彼らは自分たちが浦和レッズの一員であるという責任を、ピッチの中で表現してくれたなと思います」(浦和レッズユース・平川忠亮監督) 圧倒的なエネルギーで相手を飲み込んだ快勝劇。第48回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会は23日にグループステージ2日目が行われ、ヤンマーフィールド長居でグループGの浦和レッズユース(関東6)とV・ファーレン長崎U-18(九州5)が激突した一戦は、3ゴールを奪った浦和ユースが勝利を収め、グループ首位に躍り出た。 前日のAC長野パルセイロU-18(北信越1)との試合は1-1のドロー。「アップは雰囲気良くやれたんですけど、少し緊張もあって、全員のプレーがちょっと消極的になってしまって、前に前に行けなかったですね」とキャプテンのDF阿部慎太朗(3年)も話したように、やや消化不良に終わった初戦を受けて、勝つしかなくなったこの日の浦和ユースは、立ち上がりからアクセルを踏み込む。MF松坂芽生(3年)を中心に丁寧なビルドアップを繰り返しつつ、前半5分にはFW照内利和(3年)が、11分にはMF井上大輝(3年)がフィニッシュシーンを創出。この試合に懸ける想いを前面に打ち出していく。 一方の長崎U-18も15分過ぎからはボールも落ち着き始め、前線のFW宮崎陽(3年)と左サイドハーフのMF金ヶ瀬仁人(3年)をポイントに反撃態勢に。18分にはDF野田秦平(3年)のフィードを金ヶ瀬が収め、MF岩本悠也(3年)、宮崎と繋いだボールからMF内山航紀(3年)のミドルが枠を襲うも、ここは「前回は先制されて苦しい試合になったので、先制点を与えないようにということを考えていました」という浦和ユースのGK小森春輝(3年)がファインセーブで回避。先制には至らない。 すると、スコアが動いたのは31分。左からMF白井桜介(2年)が蹴り込んだFKにDF東方田純永(2年)が競り勝ち、こぼれを左からFW相賀天晴(3年)が折り返すと、果敢に突っ込んだFW山根且稔(2年)のダイビングヘッドがゴールネットを揺らす。2年生アタッカーが披露した執念の一撃。浦和ユースが1点をリードする。 一気呵成。33分。最終ラインから相賀が縦パスを差し込み、照内は丁寧なポストワークで右へ展開。井上が縦に仕掛けながら折り返したボールを、足を止めずに走った照内がゴールへ流し込む。「大輝がうまく仕掛けて、自分もしっかりクロスに入れたので、良い攻撃だったと思います」と話すエースの今大会初ゴール。浦和ユースが2点のアドバンテージを握って、ハーフタイムへ折り返す。 まずは1点を返したい長崎U-18は、後半4分に岩本が左へ振り分け、DF上戸涼生(2年)が斜めのクサビを打ち込むと、金ヶ瀬が反転して放ったシュートは小森にキャッチされたものの好トライ。守備陣もセンターバックのDF西村海陽(3年)を中心に安定感を取り戻し、6分に照内が、12分に白井が迎えた浦和ユースの決定機も、GK鶴井李成(3年)がともにファインセーブ。攻守に逆転への意欲を滲ませる。 違いを見せたのは“浦和の9番”。14分。白井を起点にMF中村絃太(3年)が左へ送ったボールを、投入されたばかりのDF田中一信、(2年)は左足で完璧なクロス。「クロスが入ってくる時の準備は常にしていました」という照内が叩き付けたヘディングは、左スミのゴールネットへ弾み込む。「9番の責任と誇りを持って、『絶対に点を獲る』という気持ちを強く持っています」と言い切るストライカーはこれでドッピエッタ。さらに点差が開く。 浦和ユースは守備陣も集中力を途切れさせない。35+2分には長崎U-18もDF大久保龍人(3年)のパスを宮崎が粘って残し、至近距離からFW池田一甥大(2年)が決定的なシュートを放つも、抜群の反応で小森がキャッチ。35+5分には右サイドの深い位置まで侵入されたものの、好守備で対応したMF阿部湧心(2年)は気合の雄叫び。「自分たちの武器も昨日に比べたら凄く良く出せたかなと思います」と阿部慎太朗も胸を張る。 ファイナルスコアは3-0。「今日の試合で負けたら後がなかったので、全体で行くしかないという想いがはっきりしていた分、みんな100パーセント以上の力を出して戦えていたので、本当に良いゲームだったのかなと思います」(小森)「自分たちの大事にしているベースの部分の球際、切り替え、運動量というのはしっかりピッチ上で表現できたと思います」(阿部慎太朗)。浦和ユースがリバウンドメンタリティを発揮し、グループステージ突破へ大きく前進する結果となった。 この日の浦和ユースは、とにかくエネルギッシュだった。ピッチ上でのアグレッシブなプレーだけではなく、出場機会を待つベンチメンバーも含めて、常にポジティブな声が飛び交っている。その印象を平川忠亮監督に伝えると、こんな答えが返ってきた。 「この大会はプリンス3連敗を受けて始まって、本当にうまく行っていなくて、そこを選手たちが何とかしようと、選手たち自身でいろいろミーティングをしたりしてきましたし、今日も自分たちで『声掛け、発信を続けよう』ということをテーマに挙げてやっていたので、そういった部分も徹底して最後までやり続けたのは良かったのかなと思います」。 つまりは難しい時期を経て、意識的に積み上げてきたものが、ここに来て良い形で発露しているということ。キャプテンの阿部慎太朗は「ピッチに出ている選手だけではなく、ベンチも全員で戦うというのは自分たちのスタイルなので、そこは自分たちの強みでもある一体感もしっかり表現できていたのかなと思います」とチームワークへの手応えを口にしている。 終盤には印象的な交代もあった。試合中もピッチサイドから誰よりも大きな声でチームメイトを鼓舞していたGK吉澤匠真(3年)が、小森に代わって登場すると、他の選手たちの表情にも自然と笑顔がこぼれる。 「キーパーコーチの塩田(仁史)さんからも『キーパー陣全員で戦っているんだ』と言われているので、今日は2人で勝てたことが嬉しかったです」(小森)「ピッチ内のチームメイトも素直に受け入れてくれた感じだったので、緊張せずに楽しんでできたかなと思っています」(吉澤) 平川監督も「クラブユースの予選は彼でやっていて、彼のおかげで全国に来れている部分もあるので、チーム全体もああいう選手が出てくると盛り上がりますし、彼のモチベーションも上げながら、さらにチームがまとまっていけばいいのかなと思います」と言及。このあたりの一連にも、選手とコーチングスタッフで創り上げている雰囲気が垣間見える。 次戦で準々決勝進出を懸けて戦う北海道コンサドーレ札幌U-18は、昨年度の大会でもグループステージ最終節で対峙しており、その試合で逆転負けを喫したことで、ノックアウトステージ進出を阻まれたという因縁の相手。阿部慎太朗は「本当に用意されていたんじゃないかという状況なので、今回は勝って、自分たちが去年より成長していることを証明したいと思います」とリベンジへの決意を隠さない。 「この勝利をチーム全体として1つのきっかけにしたいなと。僕自身も『果たしてやっていることが正解なんだろうか』とか、『どうすれば彼らがもっと生きるんだろうか』とかいろいろ考えましたけど、彼ら自身に僕も勇気付けられましたし、また今日みたいな試合をやっていけたらと思います」(平川監督) すべてのシチュエーションは整った。1年前に立ちはだかった壁を逞しく乗り越えるため、チーム全員で自身のやるべきことと向き合い、必ず勝利を掴み取る。高まる一体感。定めた覚悟。浦和ユースが期す真夏の進撃は、まだまだ終わらない。 (取材・文 土屋雅史)
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