ASMLとTSMC、半導体製造の無力化可能-中国が侵攻なら
オランダが今年、ASMLの2番目に高性能な半導体製造装置の輸出を停止し始めたのも、米国の要請によるものだった。ブルームバーグ・ニュースが報じたところによると、この禁止措置が発動される以前から、米当局はASMLに対し、中国の顧客向けに予定されていた出荷の一部をキャンセルするよう要請していた。
同社は、今年の中国向け売り上げの15%程度が、直近の輸出規制措置の影響を受けると予想している。
台湾を自国領土の一部だと主張し続けている中国の習近平国家主席は中台統一の実現に向け、武力行使の可能性を否定していない。
世界2位の経済大国となった中国は、第2次世界大戦以後見られなかった規模で軍備と核兵器を増強しており、米インド太平洋軍のアキリーノ司令官は今年3月の議会証言で、中国が2027年までに台湾を侵略できるよう準備しているとの見方を示した。
米議会は先月、台湾の防衛力強化に向けた80億ドル(約1兆2500億円)規模の支援を承認した。バイデン政権はまた、将来的なサプライチェーン分断の可能性に備え、半導体メーカーに390億ドルの助成金を約束し、米国内での半導体生産を後押ししようとしている。
関係者によれば、EUV露光装置は頻繁なメンテナンスを必要とするため、ASMLの予備部品がなければすぐに動かなくなる。クリーンルームに設置されている同装置は、現場での保守作業が難しく、エンジニアは汚れを持ち込まないよう特殊なスーツを着用しなければならない。
ASMLは特定の顧客に対し、定期メンテナンスの一部を顧客が自社で行う共同サービス契約を結んでおり、TSMCのような顧客は自社の製造システムにアクセスできる。ASMLは顧客の専有データにはアクセス不可能だという。
TSMCの劉徳音会長は昨年9月のCNNとのインタビューで、台湾を侵略しようとするどんな勢力であれ、実際にそうなれば同社の半導体製造装置が稼働していないことに気付くだろうと示唆。「誰もTSMCを武力で支配することはできない。軍事侵攻があればTSMCの工場は操業不能になるだろう」と語った。