観測史上最も古くて最も遠い超新星爆発を発見、120億年前、人間なら10代の若い宇宙
過去をのぞき見る
研究チームはより遠くにある超新星、つまり、より古い超新星を見つけるため、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が1年間にわたって撮影した多くの画像を比較した。研究者たちはそこから「トランジェント天体(突発天体)」と呼ばれる、画像に現れる光源や消える光源を探した。その結果、何十もの超新星が見つかっただけでなく、光の性質から、それらの超新星が何十億年も前に爆発したことが明らかになった。 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が超新星を検出できるのは、「赤方偏移」という現象のおかげだ。光が宇宙空間を移動すると、その波長は宇宙の膨張によって引き伸ばされる(宇宙論的赤方偏移)。すると、光の波長は長くなり、赤外線の領域に入る。肉眼では見えないが、適切な機器を搭載した望遠鏡で見ることができる。 赤方偏移の程度などは、宇宙の時代によって異なる。現代の赤方偏移はゼロだ。赤方偏移が大きいほど、超新星は古い。赤方偏移が2の超新星は、宇宙が33億歳のころに発生したものだが、今回発見された超新星の一つは赤方偏移3.6で、宇宙が18億歳のころに発生したことになる。 つまり、この超新星は120億年前のもので、分光学的に確認された中では、これまでに発見されたどの超新星より古い。このデータから、地球が誕生するはるか以前の宇宙がどのような姿だったかを推測できる。 「宇宙には約140億年の歴史がありますが、これらの超新星が発生したのは、宇宙がわずか20億歳ほどだったときです。人間でいえば、まだ10代の若者だったころです」とピーレル氏は説明する。
宇宙初期に関する洞察
この新しいデータは、若いころの宇宙がどのような性質で、星がどのように形成され、それらの星が爆発したときに何が起きたかを研究する出発点になるだろう。ピーレル氏によれば、遠く離れた星は、どれほど強力な望遠鏡でも見えないほど暗いことが多いという。しかし、爆発している星は明るいため、検出しやすい。 また、今回発見された特定のタイプの超新星が新たな洞察をもたらしてくれる可能性もある。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は「Ia型」に分類される超新星を少なくとも1つ検出した。 Ia型は特に明るく、宇宙空間での長距離の測定に利用できる。バーガー氏は、ダークエネルギー(暗黒エネルギー)のような現象の研究や「宇宙空間の測量では、赤方偏移が高い超新星を発見することが重要です」と述べている。 爆発する星は、私たちが暮らす宇宙に欠かせない存在だ。「恒星が爆発しなければ、私たちが知っている生命は存在すらできません」とピーレル氏は話す。地球上の生命に不可欠な元素は、宇宙がまだ若かったころ、星の爆発によって放出され、私たちの惑星とここに暮らす生命の誕生につながった。地球から遠く離れているかもしれないが、超新星は私たちの物語の不可欠な一部だ。
文=Riley Black/訳=米井香織