<解説>「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」大ヒットの理由 広くて奥深い「鬼太郎」ワールド
故・水木しげるさんのマンガが原作のテレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」第6期の劇場版「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」が、昨年11月の公開以来、口コミでじわじわと人気を集め、現在までで興行収入26億5400万円、観客動員数185万5000人を突破するヒットを記録している。長寿シリーズとなった「ゲゲゲの鬼太郎」だが、どうして今回はここまでの人気になったのか。アニメコラムニストの小新井涼さんが、ヒットの理由を解説する。 【写真特集】大ヒット! 「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」残酷描写も スタッフが明かす制作秘話
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昨年11月に公開された映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」が、興収25億円を超える大ヒットを記録しています。
鑑賞した人々の熱量が話題を広げ、従来は収束していくはずの上映館数も後発的に増えていくなど、公開後から徐々に盛り上がりを大きくし続けてきた本作。先月には日本アカデミー賞で優秀アニメーション作品賞を受賞するなど、公開から3カ月が経った今もその熱は冷めやりません。内容の魅力は大前提として、人々がここまで長く深く本作にハマり続ける要因には、他にどんなものがあるのでしょうか。
私はそのひとつに、ハマった後にどこまでも深掘りし、追いかけ続けることができる、本作を含めた「鬼太郎」シリーズの存在もあるのではないかと思います。
本作はテレビシリーズ6期に通ずる物語でありながらも、内容は原作マンガや過去作を知らずとも楽しめるオリジナルストーリーであり、主役となるのも「鬼太郎」ではなく「水木」と「かつての目玉おやじ」です。そのため人々の興味関心も本作内のみで完結してしまうのかと思いきや…起源や背景となるシリーズ全体の世界観を知り、本作をより深く楽しむための関連要素を探るべく、ファンの食指はテレビアニメや原作マンガなどの関連作品にまで伸びていきました。
実際にファンの中には、本作と通ずるテレビシリーズ6期どころか、Netflixの「悪魔くん」や他のテレビシリーズ、「墓場鬼太郎」や「続ゲゲゲの鬼太郎」といったマンガにまで触れだしている人も少なくありません。そうなると歴代テレビシリーズは500話以上、マンガや関連書籍も膨大な数がある「鬼太郎」シリーズは、本作ファンにとって掘っても掘っても本作にも通じる新しい発見や考察のタネが無数に存在する、一度入ると抜け出せない底無しの穴となり得るのでしょう。