数々のチャンピオントロフィーを手に、階段を駆け上がってきた宮田莉朋。初モノづくしのF2でも見据える先は同じく頂点「それでF1に上がれなくとも……」
2023年はスーパーフォーミュラとスーパーGT(GT500)の“2冠”を達成し、2024年から満を持してFIA F2に参戦する宮田莉朋。かねてよりF1ドライバーになることが夢だと公言してきたが、ついにその直下のカテゴリーまで辿り着いた。 【動画】宮田莉朋ダブルタイトル獲得:スーパーGT最終戦もてぎハイライト 宮田はこれまで、トヨタの育成プログラムの一員として国内トップカテゴリーまで駆け上がってきたドライバーであり、2024年もTOYOTA GAZOO RacingのWEC(世界耐久選手権)チームのリザーブドライバーに就任し、トヨタWECの“チャレンジドライバー”として将来的な正ドライバー昇格に向けて経験を積むことになる。 ただトヨタはWECやWRC(世界ラリー選手権)などの世界選手権には参戦しているものの、F1は2009年を最後に撤退しているため、それ以降トヨタ系の日本人ドライバーがF1デビューを果たした例はない。したがって「トヨタドライバーはF1に行けない」という風潮が強まりつつあったが、その風向きも変わりつつある。平川亮は2024年にマクラーレンのリザーブドライバーを務めることになり、宮田もF1直下のカテゴリーであるF2に参戦することになる。宮田はF2参戦のプレスリリースの中で「モリゾウさん(トヨタ自動車の豊田章男会長)をはじめとしたTGRの皆さん」がこのチャンスを与えてくれたと言及しており、トヨタが自社のドライバーたちに対し新たな機会を提供しようとしているのは確かだと言える。 そんな中で宮田は、アブダビのF2ポストシーズンテストに参加。F2マシンは日本のスーパーフォーミュラなどと違って「原始的」かつ「クリーンではない」と感じており、それに加えて初体験のサーキットやピレリタイヤにも順応して、F3やF2など既にFIA直下のシリーズで経験を積んでいるドライバーたちに太刀打ちすることは簡単ではないと自覚している。しかし彼は、だからといって目標を低く見積もるようなことはしていない。 トヨタは自身のF2計画を1年と言わず、ある程度長期的なスパンで見据えてくれていると思うか? 宮田にそう尋ねると、彼は次のように答えた。 「僕はチャンピオンを獲って上のカテゴリーに上がるということを繰り返してきました。カート時代もそうですし、スーパーGT、スーパーフォーミュラでの最年少ダブルタイトルもそうです。長期的に見てくれるとは思っていますが、かといって甘えるつもりはありません」 「僕にとっては、他のF2ドライバーのような『上のカテゴリーに上がるためのF2参戦』ではなく、ある意味プロドライバーの活動の中のひとつがF2なので、環境も違います。やることもF2の1本でもないですから。ただ、来年出るレースは(ELMSも含めて)全てチャンピオンを獲るつもりです」 宮田は2016年、2017年にFIA F4で2連覇を達成した後、2017年からF4と並行して参戦をスタートしたスーパーフォーミュラ・ライツ(2019年まで全日本F3)でも2020年に王座獲得。2020年にはGT500、2021年にはスーパーフォーミュラへのフル参戦もスタートし、2023年には両カテゴリーを共に制覇した。宮田は国内の主要チャンピオントロフィーを集めながら、文句なしでスターへの階段を上り続けている。 だからこそ、宮田には自分の残してきた実績への自負があり、さらにはスーパーフォーミュラのタイトル獲得により2024年の参戦計画が大きく変わっていったことも肌で実感している。チャンピオンになることの重要性は誰よりも感じているはずだ。 F1デビューを目指すためにはF1参戦メーカーやチームの育成プログラムに所属することが重要になるが、そこについて何か意識しているかと尋ねると、宮田はとにかくチャンピオンを獲ることだけを意識していると語った。 「これは僕の感覚ですが、F2でチャンピオンを獲れば(翌年以降は)F2には乗れなくなるので、それしかないかなと。バックがどうこうというのは今は考えていないですね」 「今回の件に関しても、ヨーロッパでは日本のスーパーフォーミュラの注目度が高く、僕はそのおかげでWECのリザーブになれましたし、それ以外の交渉ごとでも、SFでチャンピオンになったことで日が経てば経つほど計画が変わっていったので、SFの成績は大きかったと思います」 「今僕はTGRのプロドライバーとして活動していますが、今後もしF2でタイトルを獲得できた時に、いろんな声がかかればいいなと思います。仮にF2チャンピオンになってF1に上がれなかったとしても、そこはあまり気にしないというか……日本にずっとい続けるよりも、チャンスは広がっているはずなので」
戎井健一郎
【関連記事】
- ■ホンダからトヨタへ……福住仁嶺と大湯都史樹のメーカー間移籍を実現させた、首脳同士の議論「各ドライバーの可能性を高めるために」
- ■角田裕毅が、個人マネージャーとしてマリオ宮川氏と契約した理由。そして”同級生マネージャー”平松氏へ見せた感謝の気持ち
- ■角田裕毅、F1参戦4年目も“全戦全力投球”アプローチは変えず「寿命が縮んだように感じた」と吐露も笑い飛ばす
- ■国内レース育ちの宮田莉朋がいきなりFIA F2へ……特に苦労する点とは? スーパーフォーミュラより“原始的”なマシンで「感覚的に乗れるようにならないと」
- ■平川、宮田に続きプルシェールも……F1との距離が縮まるように見えるトヨタ。彼らがメーカーとしてF1に復帰する可能性は本当にないのか?