人気日本酒「獺祭」の米国版が登場、会長の評価はまさかの「辛口」 フルーティーな味わいでも「なんとか及第点」目指すは本家超え
国内外で人気が高い日本酒「獺祭(だっさい)」を手がける旭酒造(山口県岩国市)が初めての海外生産拠点を米ニューヨーク州で開業し、現地生産品「ダッサイブルー」がニューヨークの小売店と飲食店で9月25日に売り出された。筆者はフルーティーな味わいのダッサイブルーを早速試飲し、3代目蔵元の桜井博志会長に評価を尋ねた。すると、獺祭のほのかに甘い口当たりからは想像できないような「辛口」のコメントが返ってきた。(共同通信ワシントン支局 大塚圭一郎) ▽年間売上高の半分をかけたプロジェクト ダッサイブルーは、旭酒造が米国で造る清酒(SAKE)のブランド。名前に青を意味する「ブルー」が付くのは、ことわざの「青は藍より出でて藍より青し」に由来し、獺祭を超える商品に育てるとの思いを込めたためだ。 旭酒造がニューヨーク州ハイドパーク市に設けた生産拠点「ニューヨーク蔵」は、中心部マンハッタンの北約110キロのハドソン川近くにある。蔵の立ち上げのために米国に住んで陣頭指揮をしている桜井会長によると、「約85億円かかった」という。旭酒造の過去最高となった2022年9月期の年間売上高、165億円弱のほぼ半分を占める命運をかけたプロジェクトだ。
敷地の広さは約6万2千平方メートルと阪神甲子園球場の約1・6個分で、中心となるのが和風の設計にした「ダッサイブルー酒蔵」(延べ床面積約5100平方メートル)だ。清酒を仕込むための日本メーカー製の5キロリットルタンクを52本導入しており、事前予約をすれば木曜日と金曜日にガラス越しに酒を造っている工程を見学できる。 敷地内には杉板の表面を焼き焦がした焼杉の壁とスズの屋根でできた米蔵のような建物もある。これは酒米に使う山田錦を精米する機械を置く「精米所」だ。 桜井会長が見学コースにはない“隠れた豪華施設”だと強調するのが「10億円ほどかけた」という排水処理設備だ。排水設備の検査担当者が「どれだけ排水設備を見てきたのか分からないほどだが、このようなすごいのは見たことがない」と目を丸くしたという。ハイドパーク市は「マンハッタンに水道水を供給する源流に近い水質の良い地域」(地元住民)とされる。水質を悪化させないよう、洗米後の水も排水設備で浄化してから流す。