私たち3人は決して「アンチ大谷」ではない 疑問をぶつけることでファンに応える米番記者の報道姿勢
米時間3月25日、大谷はスキャンダルについて声明を発表したが、記者からの質問は受け付けなかった。その3日後、ヘルナンデスはロッカールームで大谷に、「水原がどうやって口座にアクセスしたのか」「なぜ誰も気付かなかったのか」を直接、日本語で尋ねた。 大谷は捜査が進行中なので話せないと答えたが、ネット上では「試合前にそんなことを聞くなんて不謹慎」だとヘルナンデスを非難する声が上がった。 しかし、メジャーリーグが試合前後にメディアにクラブハウスを開放するように定めているのは、そうしたファンが疑問に思っていることを記者が選手にぶつけられるようにするためなのだ。 「ファンは何を知りたいのか、読者は何が知りたいのかを考えて質問しに行く」 とヘルナンデス。 「日本の報道陣も同じことを考えていたはず。でも日本のメディアだと、そういうふうに取材するとファンが怒るから遠慮している。メディアは国民を代表して質問する役だと僕は思っている」 リーグとしても、メディアに話題を提供することで、知名度や人気の向上が見込める。 大谷について言えば、熱心なファンが彼をメディアの批判から守ろうとすることすら、彼の能力を過小評価していると言えるのかもしれない。 「ファンが大谷を庇いたいという気持ちが全くわからない」 とヘルナンデス。 「大谷はそこまでメンタルが弱くない。でなければ、こんなに成功していないよ。みんな普通の人の常識を通して大谷を見ている。でも、大谷は本当にすごい。WBCで、みんな期待している場面でも、楽々、活躍できた。普通の人じゃないよ、全然。僕たちも6年間大谷の周りにいたけど、彼の考え方はまだ全然わからない。でも人並みじゃないというのは分かるよね。タイガー・ウッズとかマイケルジョーダンとかバリーボンズ並み」
私たち3人は決して「アンチ大谷」などではない。かといって、大谷の応援団でもない(個人的には、ジャーナリストとして後者だと思われている方がショックである)。プロのジャーナリストとして、読者の知りたいこと、役立つ情報を探り出して、ありのままに伝えているだけだ。 「米番記者が見た大谷翔平」でも、いかにして大谷が史上最高と呼ばれる選手たちと肩を並べるような存在となったのかや、日米の報道や文化の違いなどを冷静に分析している。最終章では、ここでも言及した記者としての姿勢についても深く語り合った。 名門球団ドジャースの一員としてポストシーズンで活躍し、ワールドシリーズ制覇を成し遂げれば、大谷はアメリカ社会で更なる高みに登ることになる。その偉業の凄さや社会的意義を理解する上で、拙著が役立つことを願っている。(志村朋哉)
志村朋哉