真理は「逃げるが勝ち」!? 敵前逃亡で活路を見出した『ジョジョの奇妙な冒険』の主人公たち
■承太郎、ケーブルカーからの逃亡
次は第3部での空条承太郎とラバーソールとの戦いから紹介していきたい。承太郎といえば、まっすぐすぎるほどの正義感を持ち、どんな状況でも敵を真正面から打ち砕く……そんなイメージが強いはずだ。そんな承太郎が唯一信念を曲げた(?)ともいえる場面が、ラバーソールとの戦いである。 花京院に成りすましたラバーソールは、スタンド「イエローテンパランス」を使っていろんなものを取り込んで消化することで巨大化していった。一度でも取りつかれると引き離すのは不可能に近く、そのまま溶かされてしまう……。 あらゆる攻撃をしてもラバーソールには何も効かないとわかったので、承太郎は潔く諦める。それからジョースター家の伝統的な戦法のひとつである「逃げる」という選択を取り、乗っていたケーブルカーの床を撃ち抜いて脱出したのだ。このときの承太郎の、ジョセフの真似をするのは屈辱的だと言いたげな様子が面白い。 今までどんな敵も拳でぶちのめしてきた承太郎が、まさかの敵前逃亡である。しかし、そのまま水中へ落ちたためにラバーソールの呼吸が続かず、イエローテンパランスを引き剥がすのに成功。そこからの反撃に繋がったので意味ある逃亡だったといえる。 あっさりと逃げる承太郎は後にも先にもこの時だけなので、かなり珍しいシーンといえるだろう。
■仗助、バイクで逃走
最後は第4部での東方仗助と噴上裕也との戦いの場面だ。逃走のきっかけになったのは、岸辺露伴がトンネルの中に潜んでいた噴上のスタンドに襲われてしまったからである。 噴上のスタンド「ハイウェイ・スター」は狙った相手を執拗に追いかけ養分を奪うことができる。基本は人型だが足跡型に変化することができ、その状態だとこちらの攻撃がほぼ効かない。つまり、本体を直接叩かなければ絶対に倒せないスタンドでもあるのだ。 そのため、逃げるという選択肢しか残されておらず、仗助も露伴を助けるためにはそうするしかなかった。しかも「ハイウェイ・スター」に捕まらないようにするためには、時速60キロ以上で走らないとならないので無理難題といえるだろう。 しかしその課題を仗助はバイクに乗って見事解決!その後広瀬康一の協力もあって噴上のいる病室までたどり着くと、相手を容赦なくボコボコに……。「スゲーッ 爽やかな気分だぜ」「新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによォ~~~~ッ」と話す仗助の姿には笑ってしまった。 仗助はジョセフの隠し子でもあるので、逃げるという行為に関しての能力は一級品なのかもしれない。知らず知らずのうちに、逃げの美学を受け継いでいるところがすごい。 バトル漫画で主人公が敵前逃亡をするのはかなり珍しいといえる。これにはガッカリしてしまうかもしれないが、勝利につながるパターンもあるので、悪いことばかりではない。 ただ、そのキャラの性格によって、使えるタイプとそうではないタイプに分かれてしまう戦術だろう。
大山元