『呪術廻戦』宿儺のバトル演出はまさに原画スタッフの総力戦 “劇場版”とも言える作画に
「オマエは強いから人を助けろ」とは、アニメ第1話で虎杖悠仁が祖父からかけられた言葉である。その言葉を指針に、虎杖は正しい死を遂げるべく、多くの仲間を助けるために行動してきた。だが、『呪術廻戦』第41話「霹靂-弐-」では、虎杖の身体を使った宿儺の暴走によって多くが犠牲となった。 【写真】焼け野原となった渋谷に立つ虎杖悠仁 伏黒甚爾との戦闘で深手を負ってしまった身体に追い打ちをかけるように、重面春太に切りつけられてしまった伏黒恵。身体からは大量の血が流れているだけではなく、すでに甚爾との戦闘で呪力を使い果たしてしまった恵にはもう為す術がないかと思われた。だが、恵が「布瑠部由良由良(ふるべゆらゆら)」と唱えると、「八握剣異戒神将魔虚羅(やつかのつるぎいかいしんしょうまこら)」が召喚される。御三家・禪院家相伝の術式の一つである十種の式神術「十種影法術」を使用する恵には、五条悟からも指摘されていたように奥の手があった。それがこの「八握剣異戒神将魔虚羅」である。なぜ奥の手なのか。歴代十種影法術師の中で、誰ひとり調伏できていない最強の式神とも称される「八握剣異戒神将魔虚羅」は式神を出した当人は仮死状態へと追い込まれるのだ。 「先に逝くせいぜい頑張れ」という言葉を残して吹き飛ばされた恵だったが、その状況を察知した宿儺が現れ重面とともに救出する。それはもちろん良心からではない。宿儺には恵が生きていなければならない理由があるのだ。宿儺がやるべきことはただひとつ、恵が行った調伏の儀をなかったことにすることである。宿儺と最強の式神の過去最大規模の戦いが幕を開けた。 第41話では宿儺と八握剣異戒神将魔虚羅の戦闘を中心に描かれたが、あまりにも美しく流麗な戦闘シーンには息を呑んだ。「渋谷事変」ではこれまでも採用されていたシネマスコープを第41話では大部分で採用し、まるで映画のスクリーンで観ているかのような臨場感を演出しており、原作では約2話にわたって描かれた同バトルシーンを20分強の尺で丁寧に描いた。なお、エンディングで流れたクレジットに、これまでに類を見ないほどの数の原画と第二原画のスタッフがクレジットされていることから、このシーンにかける気合が伝わってくる。 原作では描写されていないオリジナルの作画を盛り込みつつ、宿儺は八握剣異戒神将魔虚羅に対しても圧倒的な力の差を見せつけていく。宿儺の斬撃で崩壊するビル群や電車、飛行機、宿儺と八握剣異戒神将魔虚羅の空中戦など原作を拡張解釈し、アニメならではの楽しみ方を届けてくれた。宿儺の領域展開「伏魔御厨子(ふくまみづし)」のシーンでは渋谷のビルが一気に粉々にされ、必中効果範囲内にいる多くの人々が犠牲に。その代償で渋谷は焼け野原となってしまう。 「行かなきゃ。戦わなきゃ。このままじゃ俺はただの人殺しだ」 意識を取り戻した虎杖の目の前には空虚な渋谷の街が広がっていた。その惨状を見て虎杖は慟哭する。あまりにもリアリティを帯びた榎木淳弥の叫声には心がえぐられるような気持ちがした。だが、虎杖には悩んでいる暇はない。悲しみを乗り越えて虎杖は五条のもとへと向かう。 今回は演出の都合上なのか、オープニング映像は省かれ宿儺の戦闘が一気に描かれた。今週はオープニングがないものと思っていたのだが、虎杖の覚醒とともにKing Gnuの「SPECIALZ」が流れ始めるこの演出はとても感動的だった。誰もが「ここで来るのか!」と胸を踊らせたはずだ。本編の最後にはボロボロになった七海建人の姿が映し出されていたが、何やら不穏な空気が漂っている。今週だけでお腹がいっぱいではあるが、次週からも怒涛の展開が続くだけに気を引き締めて放送を待ちたい。
川崎龍也