兄が父から200万円を借りて返せていないことが発覚しました。もしも父が亡くなった場合、遺産相続に影響はありますか?
父と兄との間で特別な約束がある場合
父と兄との間で特別な約束があり、例えば「返済の必要がない」「遺産相続の際に調整する」などの取り決めがある場合もあります。 こうした取り決めが文章化されていれば、前述の通り、お金を「貸す」「借りる」は当事者間の問題であるため、遺産分割協議において、兄がその旨を示すことで、その内容に従い遺産を相続することとなり、少なくとも兄弟間で揉める要因にはならないでしょう。 本来であれば、親子間であっても、こうした取り決めを文章化しておくことが「言った」「言わない」のトラブルを回避するために重要なのですが、実際には書類等は存在しないことが多いのが現実かもしれません。そういった場合には、お互いの信頼関係とコミュニケーション次第といえるでしょう。
遺言書があれば、その内容に従う
日本の相続では、相続が発生し、その遺産を引き継ぐにあたって、民法で相続人となるべき「法定相続人」やどのように分割すべきかを示した「法定相続分」が定められています。 ただし、「遺言書の有無」によって、手続きは大きく変わります。つまり、遺言書がある場合には、原則として遺言書の内容が優先されます。遺言書は、亡くなられた方の最期の意思表示であるため尊重されるのです。 遺志を尊重したうえで、相続人の話し合いで遺産分割することも可能ですが、もし、父が亡くなった際に遺言書があるのであれば、その内容に従うことをおすすめします。
まとめ
法的には、相続人が被相続人に対して借金がある場合、借りた側がその金額を相続財産から差し引く形で遺産相続を行うことが一般的です。つまり、兄が200万円の借金をしていると認めた場合には、相続の際に兄が受け取るべき金額から200万円が差し引くことが想定されます。 契約という観点では、弟である相談者は、兄の借金についての口出しはできませんが、将来のトラブルを防ぐ意味で、配慮しつつも、事情や状況を把握することは可能かもしれません。相続が起こってからでは真相が分からず、誤解が生じたり納得ができなかったりするまま、お互いの溝が修復できない事態に陥る事例も多くあります。 今からできること、今だからできることを考え、もしものときにも、その内容をもとに調整できるよう考えておきたいものです。可能であれば、借金の存在や返済条件について、家族全員が理解し合意していることが理想的です。透明性を持って情報を共有することで、後々のトラブルを防ぐことができます。 執筆者:大竹麻佐子 CFP(R)認定者・相続診断士
ファイナンシャルフィールド編集部