<韓国エネルギー政策の転換>中東原油調達に原発推進…日本は資源獲得の競争相手であり、電力事業の他山の石として注視を
重要性を増す原子力発電
韓国の電力政策において、原子力発電の重要性が増している。韓国はエネルギー安定確保の観点から、77年に最初の商業炉であるコリ1号機を建設し、原発の増設を進めた。韓国電力公社(KEPCO)が国内での発電・送電・配電・販売を管轄し、子会社の韓国水力・原子力発電公社(KHNP)が電力需給計画に従って、原発を運営している。 KEPCO及び韓国エネルギー経済研究院(KEEI)の統計によれば、発電比率における原子力発電のシェアは23年に全体2位の30%を記録し、ガス火力発電(27%)を抜き、第1位の石炭火力発電(31%)に迫っている。 韓国の原子力政策は、過去15年間の歴代政権下で重要な転換点を経験した。09年、李明博(イ・ミョンバク)政権は「低炭素・グリーン成長戦略」を標榜し、30年までに原子力の割合を59%まで引き上げる計画を策定した。 だが、17年5月に発足した文在寅(ムン・ジェイ)政権は脱原発を掲げ、原発の新設計画を白紙化した他、運転寿命を迎えた既存原発の稼働期間を延長しない立場をとった。同方針により、同政権は老朽化したコリ1号機及びウォルソン1号機をそれぞれ17年と19年に停止させた。さらに、30年までに7基の原子炉(ハンビッ1、2号機、コリ2~4号機、ハヌル1、2号機)の停止も計画されていた。 その後、22年5月に誕生した現在の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、前政権の脱原発路線からの転換を図った。前政権下の20年に発表された「第9次電力需給基本計画」では、原発の発電設備容量が22年の23.3ギガワット(GW)から、34年には19.8GWまで縮小を予定していた。 これに対し、尹政権が23年に策定した「第10次電力需給基本計画」では、36年に向けて31.7GWへの拡大方針が盛り込まれた。24年1月時点で、稼働中の原子炉数は25、原発の総設備容量は24.6GWである。現在、セウル3、4号機(各1.34GW)が建設中であり、新ハヌル3、4号機(各1.4GW)も計画されている。