赤ちゃんの無料預かり好評 通院・遊ぶ・寝たい・・・理由は何でもOK 山口の社会福祉法人の試み
山口県岩国市の社会福祉法人はるかは、児童養護施設を運営する傍ら、独自の育児支援を実践している。赤ちゃんを無料で預かるサービスは好評で、孤立しがちな親の受け皿にもなっている。心理や福祉の専門家による相談窓口も設ける。どうすれば地域の子どもを守れるか。はるかの試みをヒントにしたい。 【一覧】「がじゅまる」利用希望の例 岩国市内のビルの一角にある、はるかの地域支援スペース「がじゅまる」。週3日、生後6カ月未満の赤ちゃんを預かっている。うたい文句は「どんな理由でもお預かりします」。病院に行く、友だちに会う、ゆっくり寝たい…。何でもOKだ。 お迎えにやって来た市内の女性(26)の表情は、晴れやかだった。預けていたのは4カ月の双子の娘。かわいくてたまらないが、授乳もおむつ替えも通常の2倍。そろって寝付きも悪い。長男(3)も甘えたい盛り。実家の母も助けてくれるが「もう無理」と言いたくなる時もある。 就労していないため保育園は利用できない。そもそも、岩国市立は6カ月未満の子どもを受け入れていない。女性はこの日、母と2人で外食に出掛けたという。「ご飯をゆっくり食べるなんて本当に久々。また頑張ろうって思えます」 こども家庭庁も親子の孤立を防ぐため、就労を条件にしない「こども誰でも通園制度」創設へ、モデル事業を始めた。ただ対象は生後6カ月~2歳。一方、がじゅまるは6カ月未満を無料、無条件で預かっており、同庁の担当者は「ちょっと聞いたことがない」と驚く。 「出産後すぐは産後うつに陥りかねない。ワンオペで孤立している人も多く、受け皿になりたい」と、はるかの川村宏司理事長(60)は言う。こども家庭庁によると、2021年度に虐待で亡くなった18歳未満の子ども(心中を除く)は50人。年齢別では0歳がうち24人と最も多い。 娘が生後2カ月の時から利用する女性は「助けられた」と明かす。初めての育児だが、親とは不仲でとても頼れない。娘は抱っこしていないと寝てくれず、体も心も限界だった。「布団で寝かせる練習もさせてもらい、楽になった。預けると『やっぱりかわいい』と頑張れるんです」 最近は利用希望が増え、数週間待ちもざらだ。担当保育士の升本由美さん(55)と中村佳世子さん(49)からみると、育児情報があふれる中で「こうでないといけない」との思い込みに苦しめられている親は多いという。「まずは悩みを受け止め、寄り添った助言をしたい」と声をそろえる。 託児は月、火、金曜の午前9時半~午後3時で対象は市民のみ。定員は1日5人。無料。申し込みは専用アプリで。育児疲れが深刻そうな人は優先的に利用してもらう。がじゅまる☎090(3836)6085。
中国新聞社