心臓移植までの橋渡しではない「補助人工心臓」のいま3
重い心臓病の患者にとって、心臓移植の待機期間が、年々長くなっている中、新たな治療法が注目されています。この治療が他の治療と大きく異なるのは、「デスティネーション(最終地)セラピー(治療)」という名前からも分かるように、次のステップがない最終の治療となります。そのため、“人生の最期をどう迎えたいのか”同時に考える必要があるといいます。
――小野教授「心臓以外の臓器が元気だった場合には、かなり長く充実した元気な日々を送れるわけですが、やはり合併症がどこかで起こるかもしれない。元気だった肺や肝臓が何年か経ってから悪くなるかもしれない、あるいは腎臓が悪くなるかもしれない。そういうことは起こり得るわけです。そうなった時に、じゃあ次はどうやって生きていこうかということだと思います。 「例えば、ある治療を受けていたとき、その治療の効果がなくなってあなたはどうするか、前もって意思表示をする『事前指示書』があります。例えば、自分の意思を十分に周りの人と相談して、自分の希望だとか考えを伝えられなくなったときには、こうしてくださいという医療上の処置の選択、あるいは希望を記すというのがあります。『デスティネーションセラピー』を受ける患者さんには、原則この事前指示書を記入していただいて、自分が万が一のときには、『こういう治療は希望します/希望しません』といったようなことを周りのご家族の方、病院の医療者の方々に伝えられるように書いていただくことを推奨しています」 「しかし、人間というのは一度決めたことを何年も同じように考えているかと言われると、いろんな環境、自分の友達や知り合い、家族がいろいろな形で何か起こったときに、考え方は変わりますよね。そのため、この事前指示書は一度書いたら、もうおしまいではなくて、考えが変わったからこうしたいと、いつでも変えられる柔軟性はあります。万が一の時に、指示書があった場合には、特に家族はこの人はこういうふうに考えたから、意思を汲んでこの治療はここまでにしよう、この治療はこういうふうに受けていこう、ということを判断しやすいです」 「遺書といえば遺書なのでしょうけども、これは自分が万が一のときに受けるべき医療処置に対しての考え方ということなので、医療に対する事前指示書というふうに呼んでいます。こういったものを書いていただいて、意思表示をいただければ何かあったときにそれに応じた最も適切な治療をすることができると考えています」