地域でイチョウ収集、線路脇の雑草対策に 落ち葉敷き詰め光合成阻害 JR加古川保線管理室が専門家と検証
JR西日本の姫路保線区加古川保線管理室が、線路脇に繁茂する雑草対策として、地域で収集されたイチョウの落ち葉を敷き詰める取り組みを進めている。雑草の光合成を阻害するほか、イチョウには周囲の植物の生育に影響を与える「アレロパシー」という働きがあるといい、同室が専門家の監修を受けて検証し、昨年12月から展開。今月12日、職員7人が兵庫県の加古川市立氷丘南小学校(加古川町溝之口)を訪れ、児童らが校内で拾い集めた落ち葉を受け取った。(増井哲夫) 【写真】線路脇にイチョウの落ち葉を敷き詰める加古川保線管理室の職員ら 同保線区では線路脇の除草についてコストや労働力などが課題だった。長浜哲朗室長が昨夏に長野県に帰郷した際、90代の女性の親類から「畑の近くにイチョウを植えると野菜が育たない」という話を聞き、防草に使えないかと思い付いた。 アレロパシーに詳しい藤井義晴・東京農工大名誉教授の監修の下、神戸線土山-魚住間約70メートルの線路脇で検証実験を実施。雑草を刈り取った後の土地で①除草剤散布のみ②除草剤散布とイチョウを30ミリ敷き詰める③イチョウを30ミリ敷き詰めるのみ-などで比較した。9カ月後、①は雑草が繁茂、②は繁茂せず、③は刈り取り不要な程度に草が生える状態で、イチョウの効果が確認できたという。 同保線区管内を中心にイチョウの有名な場所を探し、昨年12月以降、称名寺(加古川市)、社高校前(同県加東市)、同県佐用町の大イチョウなど10カ所以上で落ち葉を収集。他の線路脇でも、落ち葉を敷き詰め、ネットをかぶせていくという。 氷丘南小にはイチョウの木が7本植わる。毎年この時期、大量の落ち葉が出るが、腐敗が遅く、肥料にも使えないため、これまではごみとして処分していた。今年11月、長浜室長が来校して取り組みについて説明し、協力を要請。収集の協力依頼を受けた原武弘校長は「ごみにするしかない物を役立てるのはSDGs(持続可能な開発目標)の学習にもつながる」と応諾した。 12日は児童、近くの幼稚園児、地域住民ら計約80人がイチョウの木の周辺で荷車2台分の落ち葉を拾い集め、同室職員がトラックで持ち帰った。 取り組みは、10月の日本鉄道施設協会の総合技術講演会で優秀賞に選ばれたほか、鉄道各社からも視察の要望があるという。長浜室長は「おばあちゃんの知恵から始まった企画がこんなに注目されるなんて驚き。地域や学校、自治体などと協力した取り組みがさらに広がれば」と期待を寄せた。