<映画評>宇宙空間に一人 無事生還できるか?「ゼロ・グラビティ」
宇宙空間に投げ出されて、たった一人、そこからどう生還するか? 考えただけでも息苦しくなるようなシチュエーションだ。サンドラ・ブロックとジョージ・クルーニー共演の映画「ゼロ・グラビティ」は、そんな漆黒の宇宙空間で絶体絶命の状況に陥った一人の女性のサバイバルを、圧倒的な臨場感で描いた「スペース・サイエンス・エンターテインメント」だ。 【動画】ジョージ・クルーニーは最低? サンドラ・ブロック来日会見 監督は「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」、「トゥモロー・ワールド」のアルフォンソ・キュアロン。プロデューサーは「ハリー・ポッター」シリーズ全8作品を手がけたデイビッド・ヘイマン。サンドラとジョージは初の共演となる。 動画URL:http://www.youtube.com/watch?v=smW6wRI9q_M
ストーリー
地上600キロの宇宙空間。この作品は宇宙から見た美しい地球の映像で始まる。画面隅からゆっくりと近づいてくるスペースシャトル。サンドラ演じるメディカル・エンジニアは、ジョージ扮するベテラン宇宙飛行士らの軽口を聞きながら船外ミッションを行っていた。そこへ突如、襲いかかるスペースデブリ(宇宙ごみ)。二人は宇宙空間に投げ出されてしまう。酸素が残り少ない中、地上との交信も断たれ、その上、シャトルも大破。絶望的な状況から地球に無事生還することはできるのか。90分間、息つく暇もないスリリングな映像で描く。
撮影技術
見どころの一つは、無重力空間を精密に再現した映像。劇中では無重力での浮遊シーンはもちろん、サンドラが宇宙空間に投げ出されて、くるくると回転してさまようシーンなど、宇宙を「体感」しているかのような臨場感あふれる映像が登場する。こうした映像を撮影するために、コンピューターでのシミュレーションが重ねられたという。キュアロン監督は「宇宙ごみの爆発や宇宙飛行士をつないでいるロープが宇宙空間でどのように動くかなどをシミュレーションした」と語っている。
人間ドラマ
主人公のメディカル・エンジニアは、つらい過去を抱え、強い喪失感を持ったまま生きていた。そんな中で陥った、生死をかけた絶体絶命の状況。彼女は生き延びることを選択できるのか。この物語は単なるサバイバル劇ではなく、一人の女性の内なる葛藤を描いた作品ともいえる。その意味で、ラストのシーンは幾重にも暗喩的で圧巻だ。 作中にはキュアロン監督の得意の手法であるロングテイク(長回し)を駆使したカットや、音がない本来の宇宙空間を描写するために、無音になるカットもある。 それにしても宇宙空間とは、いかにシビアな環境か。「無重力空間」には、人工衛星やロケットの部品などたくさんの宇宙ごみが漂っていて、例えばネジ1本でも、それがものすごい速さで周回し、衝突すれば「命取り」になる危険性がある。そんな宇宙ごみが抱える問題の深刻さについても考えさせられた。
アカデミー賞候補の呼び声も高い本作品。12月13日(金)から全国で公開される。 ■公開情報 『ゼロ・グラビティ』 2013年12月13日(金) 全国で3D/2D 公開 配給:ワーナー・ブラザース映画 動画URL:http://www.youtube.com/watch?v=VfFYb3OyDVQ