多様な治療の選択肢ー骨盤臓器脱~自分に合った方法を選ぼう~
◇自己着脱すれば妊娠も可能
―自分でペッサリーを出し入れするのは難しいですか。 最初は、「自分でペッサリーを入れるなんて無理」と言っていた患者さんも、きちんと看護師が指導すれば、ほとんどの人ができるようになります。 自己着脱法を選択した患者さんの満足度は非常に高く、手術を予定していて、順番を待つ間の応急処置としてペッサリーを使用した患者さんが気に入ってしまい、そのまま手術をキャンセルする、などといったケースも出ています。 自己着脱法には、妊娠希望の人でも使用できるというメリットもあります。一人産んだあとに骨盤臓器脱になり、もう一人産みたい、という場合、性行為のときに外すようにすれば、妊娠も可能です。 なお、妊娠中期以降は子宮が大きくなっていくため、骨盤に引っ掛かって脱出してこなくなるので、骨盤臓器脱でも妊娠、出産は可能です。 ―ペッサリーは誰でも使えますか。 腟の奥行きと幅が重要なポイントになってきます。奥行きが浅くて幅が広いと、ペッサリーが脱落しやすいため、入り口が狭く、奥行きが長い腟の方が向いています。 実際に装着してみて、排尿や排便しても脱落しないかどうかなど、チェックしながら、サイズ調整も行います。ほとんどの人が使えますが、どのサイズを試しても、脱落してしまって使えないという場合もあります。 また、自己着脱をしていた人でも、高齢になると、自分でいつまで着脱できるか不安だと言って、手術を選ぶ人もいます。 ―新たにペッサリーを開発したのは、なぜですか。 自己着脱が簡単にできるようにするためです。ペッサリーの素材が硬いと、着脱の時に痛みがあり、装着中も腟に違和感を訴える人が多かったからです。 軟らかい素材で、ある程度、腟の形にあわせて変形してくれたら、もっと患者さんが自分で楽に着脱できるし、装着後の違和感も減るのではないかと思い、これは自分で作るしかないと思いました。そこで、ペッサリーを作っている国産メーカーに話を持ち掛け、シリコン製で非常に軟らかく、着脱が痛くない、違和感がない安全な素材のペッサリーを開発し、2023年夏に発売されました。 まだ、ペッサリーの自己管理法を行っている婦人科はごく一部ですが、今後、希望する患者さんが増えてくれば、導入する医療機関も増えていくのではないかと期待しています。(ジャーナリスト・中山あゆみ) 明樂重夫(あきら・しげお) 1983年日本医科大学卒業、87年同大学大学院修了。東部地域病院婦人科医長、日本医科大学付属病院産婦人科病棟医長を経て、2011年より日本医科大学産婦人科教授。22年4月より現職。