自動車ファンの高齢化は日本車で阻止可能!?【大矢アキオ ロレンツォの連載コラム 第47回】
イタリア・シエナ在住の人気コラムニスト、大矢アキオ ロレンツォがヨーロッパのクルマ事情をお届けする連載企画。第47回は、自動車ファンの高齢化を阻止するのは日本車だった!? ヨーロッパの若者たち惹きつけるクルマの正体とは。 【写真を見る】えっ、いまそんなに高いの? ちょっと古い国産・輸入車の中古車最新事情!
「人生は短い」ゆえに
イタリアでは「ヤングタイマー」と呼ばれる古典車の人気が上昇している。世界古典車連盟(FIVA)が認める時代以前に属する車両という認識もあるが、厳密な定義はない。おおむね20~30年前に流通した車両を指す。 たとえば「アルファ・ロメオSZ」は、2021年には6万5千ユーロ近くで取引されていたが、今や8万ユーロ台の個体がみられるようになった。日本のJAFに相当するACI(イタリア自動車クラブ)が、「ヤングクラシック」という月刊誌を2023年に創刊したのも、その注目度を象徴している。 近年では「インスタント・クラシック」という新しいカテゴリーも定着しつつある。こちらはヤングタイマーより若いモデル、かつすでに評価が定着したものを指す。「アバルト124スパイダー」がその一例で、生産終了後わずか約3年にもかかかわず、それとみなされ始めている。 さて、今回動画で紹介するのは、2023年10月26-29日にイタリアで催されたヒストリックカーショー『アウトモト・デポカ』である。従来イタリアのパドヴァを舞台にしてきたが、第40回を迎えた今回から、会場がより広く新しいボローニャで開催されることになった。 効果は絶大だった。総面積23万5千平方メートルの会場には7千台が展示された。同じヒストリックカーショーで、2023年2月にパリで開催された「第47回レトロモビル」の台数が約1千台であったことを考えると盛況ぶりがわかる。 ここでも主役はヤングタイマーとインスタント・クラシックであった。あるショップのオーナーは、筆者に背景をこう分析してくれた。「明らかに新型コロナウィルスがきっかけでした。人々は『人生は限りある。少年時代に憧れたクルマを今、楽しんでおこう』と思うようになったのです」 アウトモト・デポカ2023で、来場者の35%は外国からだった。とくにイタリアのコレクターが手放すクルマを目当てに、ドイツやスイスなどアルプス以北からやってきたビジターが多かった。ポテンシャル・バイヤーである彼らには、すでに白髪をたくわえた人々が目立った。 それもそのはずだ。ひと足先にヤングタイマーという言葉が定着し始めた国々では、それなりの年月が過ぎている。たとえば、フランスを代表するヤングタイマー専門誌、その名も『YOUNGTIMERS』の創刊は2010年だ。すでに14年近くが経過している。