10万人が犠牲になった「マニラ虐殺」…日本軍が起こした残虐行為をめぐる「知られざる真実」
親日的だが、被害をけっして忘れていない
日本人は忘れがちだが、フィリピン全体ではさきの大戦で100万人以上が犠牲になったといわれる。 では、同国では反日感情が強いのかといえばまったくそうではない。外務省が昨年度にASEAN9ヵ国を対象に行った対日世論調査では、日本との関係について「とても友好関係にある」もしくは「どちらかというと友好関係にある」と答えたフィリピン人はじつに97%に達した。 もちろん、はじめからそうだったわけではない。戦後しばらくのあいだ、フィリピンでも反日感情は熾烈で、日本企業の活動が認められていなかったほどだった。それが和らいだことについては、いくつかの理由があげられている。 戦没者の遺族や戦友などによる慰霊ツアーが早くより実施され、その際にフィリピン人への謝罪の機会があったこと。クリスチャンの多いフィリピン人が罪を許すことに寛容だったこと。日本の経済支援が効果を発揮したこと。フィリピン人は日本人より平均寿命が短く、戦争の記憶が早く薄らいだこと。マルコス政権の圧政により、日本の加害が相対化されたこと。 最近では、中国の台頭により日比間で安全保障上の利害が一致していることもあるようだ(以上、大野俊「フィリピン人の対日認識の変化とその要因」『清泉女子大学紀要』67号、「アジアの中の『反日』と『親日』再考」『清泉女子大学紀要』68号などを参照した)。 なるほど、目下の圧政のせいで過去の加害が相対化されるというのは台湾とも似ており、ハッとさせられた。平均寿命の差異が戦争の記憶継承に影響するという視点も、国外に出ていかないとなかなか気付かされない。 ただ、フィリピン人は親日的だが、被害をけっして忘れたわけではない。そんな事情を象徴する、興味深い歴史博物館がアンヘレスの近くにあった。 さらに、こちらの記事<「日本の初代天皇」とされる「神武天皇」のお墓がどこにあるか知っていますか>では「戦前の日本」の知られざる真実をわかりやすく解説しています。ぜひご覧ください。
辻田 真佐憲(文筆家・近現代史研究者)