「私を見かけてもSNSに書かないで」アンジュルム・川村文乃さんが懸念、引退した芸能人のプライバシー権は?
●「今の生活を保護される権利」を考えるべき時期だ
また、裁判所による法的保護だけではなく、芸能事務所側の配慮も重要になると思われます。 芸能事務所とアイドルのマネジメント契約上は、芸能事務所側が、活動期間中の著作権法上の権利や肖像等の利用権を保有し続けることになります。なので、芸能事務所は、過去の映像等についての権利使用は自由ではあります。 しかし、過去の映像であっても使い方によっては、まるで今も活動しているかのように受け取られる可能性があります。したがって、元メンバーごとに現在の生活環境に応じた対応が重要だと思います。 インターネットをめぐっては、過去の逮捕歴などの削除を求める「忘れられる権利」が指摘されることがあります。ですが、元アイドルの場合は「忘れられる権利」と異なり、過去の活動記録は残しながらも引退後の「今の生活を保護される権利」を考えるべき時期だと思います。 ここについての裁判例は、私が知る限りは存在していませんし、元アイドル人口が増える一方で、法的な議論や保護も追いついていません。現状は、ファン、事務所、世の中の配慮によって保護が実現される権利だといえるでしょう。 【取材協力弁護士】 河西 邦剛(かさい くにたか)弁護士 レイ法律事務所 「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。「清く楽しく美しい推し活~推しから愛される術(東京法令出版)」著者。