岸田政権に決定的に欠けているものとは。「異次元の少子化対策」「骨太の方針」…与党内で増税議論を続けたい財務省の思惑どおりの政策
『安倍晋三vs財務省』#3
岸田政権に決定的に欠けているものとは何か。財務省の思惑をただ次々と発表するだけのから、産経新聞特別記者・編集委員兼論説委員の田村秀男氏と元産経新聞政治部長でジャーナリストの石橋文登氏が問題点に迫る。 【関連書籍】『安倍晋三vs財務省』
『安倍晋三vs財務省』(扶桑社) より、一部抜粋、再構成してお届けする。
何が岸田さんに欠けているのか
田村 岸田さんは、最初だけはもっともらしいことを言います。2023年の「骨太の方針」でも、「新しい資本主義」や「次元の異なる少子化対策」といった人目を惹く題目を並べています。 ただし、財源は先送りか、財務官僚まかせで増税メニューを受け取ります。結局、何もできないで、ただの作文で終わってしまう可能性が大きいと言わざるを得ません。 石橋 そもそも何が足りていないと、田村さんは思いますか。 田村 結論から言えば、緊縮財政や消費税増税がデフレの元凶なのですが、そこに触れるのを避けています。 「新しい資本主義」のスローガンは空疎ですね。何よりも脱デフレへの執念が欠如しているからです。岸田さんの国会所信表明演説を聞いても「デフレ」という言葉が出てきません。 例年6月に、内閣が決める次年度予算編成のガイドラインである「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の2023年版を読むと「デフレ」の言葉がいくつかありますが、なぜデフレ経済になったのか原因には言及しないまま、「成長と分配の好循環」を目指すという。 デフレから脱出するために欠かせない積極財政に背を向けたまま、異次元の少子化対策、賃上げ、未来への投資の必要性をうたいます。 しかしながら、緊縮財政を続けるから、デフレ圧力は去らず、賃上げや投資の勢いが削がれてきたのです。デフレ圧力のもとで、勤労世代の実質所得が減り続けるから、婚姻率は下がるし、出生率も下がってきたのです。 骨太方針をつくっているのは財務官僚であり、彼らにとっては緊縮財政や消費税増税は省是みたいなものですから、それを否定するようなことは絶対に書くわけがありません。岸田さんはそれにやすやすと従っています。 岸田首相周辺に脱デフレを口にする経済閣僚はこれまで見当たりませんでした。そこで、2023年9月13日の内閣改造人事に注目していたら、新任の新藤義孝経済財政・再生相が脱デフレについて「これが私の仕事だ」と述べたので、あれっ、いたのか、と驚かされたほどです。