『海に眠るダイヤモンド』脚本家・野木亜紀子 × 監督・塚原あゆ子の頭の中
毎週同じ時間に観るという地上波ドラマの面白さ
──作品を作るうえで決めていること、譲れないこと、習慣を3つずつ教えてください。 塚原:まず「ドラマの台本は、静かな場所では読まない」。私自身、ドラマを観るときは周りに家族や犬がいる中で観るんですよ。だから台本を読むときも、ざわついた場所で。 ──観る人のシチュエーションに合わせる? 塚原:そう。だから映画の台本は静かな場所で読みます。二つ目は、「台本の見返しに、その回に起こる事象を目次化しておく」。地図のようなものですね。絵で描く人もいるけど、私は文字。最後は「スタッフが帰る時に、さようならと言う」。その日の現場が終わったら、一応ぐるっと回ってみんなの顔を見て「お疲れ様でした、ありがとう」と。撮影現場って、放っておくといつまでも仕事が続いてしまうんです。だから「今日は終わったね」という確認は、朝のおはようよりも大切な気がしています。野木さんは? 野木:「自分が面白くないと思ったことは絶対採用しない」。ドラマや映画で「なんでこうなった?」というとき、権力を持った人が余計なことを言って、それにみんなが逆らえなかった結果でそうなっていることがある。だから、特に昔は相当戦いました。相手が誰だろうと、面白くないと思ったことにはちゃんと抵抗しようと。 塚原:それは大事なこと。「面白くない」とは少し違うけど、野木さんに「こんなシーンがほしい」とリクエストしても「ごめん、その流れにはならなかった」と言われることがある。この前も新井さんの「キスシーンがほしい」は採用されなかった(笑)。 野木:努力して入るなら入れるけど、どうやってもどうにも不自然な時もあるからね。二つ目は「必ず面白くなると信じて諦めない」。考えれば、どこかに出口はある。絶対諦めない。「これ、世の中に出るんだよ?こんなつまらないの出していいの?」と自分に確認し、「これ大丈夫?」と人に聞いたりもしますね。そして3つ目は「寝る」。悩んでいるときにそのまま寝ると、だいたい起き抜けに思いつくんですよ。 塚原:え!それ、脳が寝てないんじゃないの? 野木:睡眠がなぜ必要かって、記憶を整理するためですよ。だから寝ていいんです。 塚原:私もスランプの時に試してみようかな。……スランプってなんだ?わからない。 野木:塚原さんはないでしょ、スランプ(笑)。でも就寝前にすごく考えなきゃダメだよ。ギリギリまで考えたことを抱えて、眠るんです。 ──最後に、配信など他の媒体が増えた中で地上波のドラマを作る意義をどう考えていますか? 野木:配信は尺が自由なのと、制作費が多いのは羨ましい。でもだいたい全話一斉公開されてしまうから、毎週観る楽しみがないんですよね。 塚原:たしかに! 野木:毎週同じ時間帯にああだこうだ実況とかしながら全国のみんなが同時に観られるのは地上波のドラマならでは。だから、私は、地上波もまだまだ楽しいよね、と思います。 塚原:そうね。次の日に職場の人たちと「観た?」とか話題にしてほしい。じゃあ、毎週観てもらうために、これから撮影に行ってきます。今日は台風シーンだから、嵐を作ってくるわ。 野木:大変!行ってらっしゃい! 塚原:ぜひ、野木さんがいかに私たちに無茶振りしているかを観てください(笑)。