ヤンキース田中将大 右肘痛の背景と不安視される最悪のケース
マイナーコーチの経験が抱負なマドン監督は、5月上旬の時点で田中のスプリットの多さを懸念していたことになる。MLBの記録データを扱うサイト「FanGraphs」によると、今季田中が投げたスプリットは全体の25・1%。同監督は「ダルビッシュもスプリットを投げるが、田中程多くはないし、上原は1イニングだけだから、それ程、球数は多くならない」と、日本人投手の中でも田中の特異さについて言及した。 更に過去に遡れば、田中が楽天時代の日本シリーズ第6戦で160球を投げたニュースは、米国でも驚きを持って伝えられ、投球過多を懸念する声が起こった。レッドソックスのヘンリー・オーナーは田中の160球登板に「驚いた」と率直な感想を語り、「才能ある選手を高額な投資で獲得しようとすれば、投資する側は、肩、肘の疲労とそれに伴うリスクを念頭に置くべきだろう」と語っている。 リトルリーグのレベルから球数制限や休日の確保が規約化されている米国と比べて日本人投手は若い頃から球数を投げ込んでいるし、連投も多い。過去にメジャーデビューを果たしてから、米国でトミー・ジョン手術を受けた日本人選手は、松坂の他に、田沢純一(レッドソックス)、藤川球児(カブス)、前日、念願のメジャー初登板を果たした和田毅(カブス)がいる。社会人から頭角を現した田沢以外は、いずれも甲子園を涌かせた高校時代から一線で注目を浴びてきた投手たちだ。松坂は典型的な先発完投型だったし、藤川は阪神時代の07年に有名な「炎の10連投」をやってのけている。メジャーでは到底ありえない数字だ。 高校時代から甲子園で投げ、楽天では7年で公式戦175試合に登板した田中の肩、肘について、メジャー側は慎重だった。新ポスティング制度の設立が遅れて、交渉時間が制限された中、田中は1月に渡米してロサンゼルス滞在中に健康診断を行い、入札球団が診断結果をシェアできるようにした。交渉が成立したヤンキースは1月の正式入団前にも再度、球団のメディカルチェックをしているだけに、今回の痛みは、日本時代の疲労の蓄積ではなく、渡米後、慣れない中4日での登板が続いたからかもしれない。 現時点で確かなのは、前半戦最終戦13日と15日のオールスターでの登板はないということ。9日のDL入りなら(後日最終登板日の8日に遡る事も可能)最短で24日に戦列復帰が可能。実質、先発が2回飛ぶだけで済む。軽症であることを願うばかりだ。