ぎょっとする埼玉グルメ“塩あんびん”ずっしりボリューミー 大福だと思って食べると驚き、主力商品にしている老舗和菓子店も「おやつより総菜に近く、食事代わりに」 じつは巣鴨の定番土産“塩大福”のルーツ
「いろんな食べ方があることを知ってほしい。また、おやつというよりも総菜に近いので、食事の代わりという認識が広がれば」と優は語った。(敬称略) ■巣鴨名物のルーツに 観光客で連日にぎわう東京・巣鴨の定番土産と言えば塩大福。甘味と塩味のバランスが絶妙な逸品は、実は塩あんびんがルーツだ。上尾出身の菓子職人が慣れ親しんだ味から名物を作り上げた。 巣鴨地蔵通り商店街にある和菓子店みずのは「塩大福発祥の店」。3代目の水野貴之(56)によると、初代の龍吉(りゅうきち)は上尾の農家の生まれで1920年、菓子職人を目指し12歳で上京。巣鴨駅前で独立し後に出征したが、復員し47年に現在地で店を再開した。 間もなく塩大福を発売。商品開発のヒントになったのが、龍吉の故郷に伝わる塩あんびんだった。龍吉は、娘婿で2代目の三郎と試行錯誤を重ねた。三郎が千葉の九十九里浜で製塩をしていた経験も生かされた。貴之は「砂糖と塩のバランスをどうするか。一番の課題だったと思うが、当時ははかりも今ほど発達していない。さぞかし苦労したでしょう」と推し量る。
発売当初こそ売れ行きはいまひとつだったが、やがて程良い甘さが受けて人気商品に。今、みずのの店先には塩大福を求める観光客や常連が詰めかけている。塩あんびんから塩大福を作り上げた祖父と父親には「感謝しかない」と話す貴之だが「味は毎日変化しているんですよ」。名店は日々、味の探求を怠らない。