<城が語る>ハリルJの残る人、消える人。
ハリルホジッチ監督は、年内最後の代表戦となるロシア・ワールドカップ、アジア2次予選のカンボジア戦に前戦から先発メンバーを8人も代えてきた。来年から本格化していく戦いに臨む固定メンバーの最終選考の狙いがあってのものだったらしいが、前半は、そのせっかくの場でアピールのできた選手は少なく、パスミスが目立ち、ゲームマネジメントもうまくいかなかった。 特に山口蛍―遠藤航のボランチコンビが機能せず、ボールが出てこなかった。そうなるとリズムも作れず、引いて、特に中を締め、守りを固めてきたカンボジアのディフェンスを崩すのは簡単ではない。香川真司が下がって攻撃の起点を作ろうとしたが、リズムは変わらなかった。遠藤には経験値が足りなすぎた。 宇佐美貴史は、相変わらずコンディションが悪そうな動きで目立たなかったし、原口元気も決定力に欠けた。右サイドから積極的に前へ仕掛けていた長友佑都に比べて、左サイドの藤春広輝は、長所であるはずのスピードが生かせずガンバでの動きを見せることができなかった。 センターバックに入った槙野智章も、前半30分にあわやPKのファウルをパネルティエリアギリギリの危ない位置で冒した。身体能力が高く、のっているときは素晴らしい働きをするが、同時に大きなミスもやらかすプレーヤー。安定感に欠けるのが彼の課題だが、その部分を格下相手に露呈してしまった。 この試合を最終選考と捉えるならば、合格点をもらったのは、柏木陽介だけだろう。12日のシンガポール戦でも、存在感を示したが、この日も、後半から遠藤に代わって柏木が入った途端、攻撃にアクセントが生まれた。中盤からの自在で正確なパスで何度もカンボジアディフェンスの裏を揺さぶった。後半6分の結果的にオウンゴールとなった先制点も柏木のフリーキックからだった。回って落ちるという回転を加えた絶好のボールを意識的にピンポイントで蹴っていた。高温多湿のアジア独特の暑さや、人工芝でチップが撒かれたピッチは、日本代表にとって戸惑うものだったのかもしれないが、15分間もプレーすれば慣れるもの。 その点、柏木の対応力の高さも目についた。今後、厳しいプレスで対峙してくるレベルのチームを相手にしたときに、どこまでボールをコントロールしてプレーできるかが課題だろうが、期待感は高まる。